HOME広報活動刊行物 > Jan 2017 No.024

研究紹介

カロリー制限による網膜神経細胞死の抑制に成功

英国科学雑誌 「Scientific Reports(サイエンティフィック レポーツ)」 に視覚病態プロジェクトの郭 暁麗主任研究員らの研究成果が発表されました。

視覚病態プロジェクト 主任研究員郭 暁麗


1.研究の背景

緑内障は網膜と視神経に障害が起きて視野が欠ける目の病気で、日本における最大の失明原因です。中でも正常眼圧緑内障は、日本人では最も多いタイプの緑内障です。当プロジェクトでは2007年に世界初となる正常眼圧緑内障のモデルマウスを確立して研究を続けています。最近では薬剤に加えて、カロリー制限が神経保護に有効であることが報告されています。我々は正常眼圧緑内障モデルであるEAAC1※欠損マウスにカロリー制限を行い、病期の進行が抑制できるかを調べました。


2.研究の概要と成果

生後5週齢から12週齢まで、一日おきの絶食をしたEAAC1欠損マウスでは、網膜神経節細胞死が抑制され、また多局所網膜電位の計測により、視機能障害も改善することがわかりました(図1A)。このことは、光干渉断層計 (OCT) による生きたマウスの網膜の可視化によっても確認されました(図1B)。

詳しく調べると、一日おきの絶食により血中ケトン体濃度や網膜におけるヒストンのアセチル化が上昇し、酸化ストレスの増加が抑制されることが確認されました(図2)。これらの複数の要因が、一日おきの絶食による神経保護作用に寄与すると考えられます。

図1 一日置きの絶食による網膜変性の抑制効果

図

A: (上段)緑内障マウスでは網膜神経節細胞の減少が観察されるが(中)、一日置きの絶食により、網膜神経節細胞死は抑制されていた(右)。矢印は網膜神経節細胞を示す。(中段)逆行性ラべリングにより、網膜神経節細胞の減少が観察されるが(中)、一日置きの絶食により抑制された(右)。(下段)多局所網膜電位による視機能解析。一日置きの絶食をしたマウスでは、網膜機能が保たれていることがわかる(右)。

B: OCTによる網膜の生体イメージング。同一網膜の生体イメージングを5週齢(左)と12週齢(右)に行った。一日置き絶食マウス(下段)では、12週齢における網膜内層の厚みが保たれている事がわかる。矢印は網膜神経節細胞を含む、Ganglion Cell Complex(GCC)と呼ばれる網膜内層部分を示す。

図2 一日置きの絶食による血中ケトン体濃度の上昇及び酸化ストレス増加の抑制

図

A: 一日置きの絶食による血中ケトン体濃度の上昇。

B: 免疫染色法により、緑内障マウスの網膜における酸化ストレスの増加が観察されるが(中)、一日置きの絶食により抑制された(右)。


3.発見の意義

Cdc7キナーゼは複製開始の引き金をひきますが、今回の発見は、Claspinは複製フォークの進行のみならず、Cdc7キナーゼを呼び込む事により複製開始のタイミングと部位を制御することが明らかになりました。この発見は動物細胞のゲノム複製制御に新しい視点を加えました。一方、この制御システムはがん細胞では作動していないことも明らかになりました。本研究の発見は、がん細胞のゲノム不安定性の原因となる複製制御異常の一側面を初めて明らかにしたという点でも意義深いものです。


参考文献

Guo X, Kimura A, Azuchi Y, Akiyama G, Noro T, Harada C, Namekata K, Harada T.
Caloric restriction promotes cell survival in a mouse model of normal tension glaucoma.
Sci Rep. 2016 Sep 27;6:33950.


用語説明

※EAAC1:光の情報を脳に伝える伝達物質としてグルタミン酸が重要とされています。しかし、グルタミン酸濃度が過剰になると、神経細胞に障害をもたらしてしまいます。EAAC1とは、グルタミン酸の濃度を調節するグルタミン酸トランスポーターのひとつです。

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