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哺乳類のオートファジー経路に関わる新規因子:BCAS3-C16orf70複合体の発見

ユビキチンプロジェクトの小島和華外部支援研究員、山野晃史主席研究員、松田憲之参事研究員らは「哺乳類のオートファジー経路に関わる新規因子:BCAS3-C16orf70複合体の発見」について米国科学雑誌 Autophagy に発表しました。

ユビキチンプロジェクト 外部支援研究員小島 和華


私たちの体を構成する細胞は、その中に存在する核やミトコンドリアなどの細胞小器官や、様々なタンパク質が機能することで、生命活動を行っています。細胞には、例えばタンパク質の材料となるアミノ酸が足りなくなった時に、既にある別のタンパク質を分解してアミノ酸を捻出したり、ミトコンドリアが故障した時にそれを分解して除去するような「オートファジー」というシステムが備わっています。今回私たちは、哺乳類細胞を用いて効率的なオートファジー関連因子のスクリーニングを実現し、これまでオートファジーに関わることが知られていなかった2つのタンパク質:BCAS3とC16orf70を、新規オートファジー因子として同定しました。

オートファジーでは、隔離膜という脂質二重膜が分解の標的を取り囲みます。膜は伸長し、閉じてリソソームという細胞小器官と融合し、分解の標的はリソソーム内部に含まれる酵素によって分解されます(図1)。本研究では、タンパク質間相互作用を調べる実験や顕微鏡観察によって、BCAS3とC16orf70が複合体を形成し、隔離膜上に集積することを示しました(図2)。さらに、BCAS3タンパク質の立体構造のモデリングを行い、変異体を用いた解析を組み合わせることで、隔離膜を構成する特定の脂質との結合部位を明らかにしました。

オートファジーは細胞の健康を維持するための重要なシステムです。本研究のように、そこでどのようなタンパク質が機能しているかを明らかにすることは、どのような場合にシステムが破綻してしまうかを知り、病気の発症を事前に抑えるという医学的応用にもつながると期待されます。


図1

図1. オートファジーシステムでは、標的を隔離膜という脂質膜が取り囲み(隔離膜が伸長して閉じたものをオートファゴソームといいます)、リソソームと融合して分解酵素により分解します。

図2

図2. 細胞内でダメージを受けたミトコンドリア(ミトコンドリアタンパク質TOMM20:青)の周りに集積するBCAS3-C16orf70(緑)。隔離膜上に局在することが既にわかっている既知のオートファジータンパク質WIPI2(赤)のシグナルとよく重なります(Merge)。

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