HOME刊行物 > Jul 2021 No.042

開催報告

2021年度 第1回 都医学研都民講座(2021年4月30日 開催)
「ゲノム研究がもたらす新しいがん医療」

所長・ゲノム動態プロジェクトリーダー正井 久雄

本年度4月30日の都民講座は、九州大学の藤田雅俊先生をお迎えして、オンラインにて開催しました。テーマは「ゲノム研究がもたらす新しいがん医療」です。

はじめに正井から「ゲノムと私たちの生活」と題して、ゲノム情報の解読は私たちの生活に大きな影響を与えていること、特に、ゲノムの変化が原因で引き起こされるがんは、細胞が増殖する過程で起こるゲノム複製の失敗が積み重なって生じることをわかりやすく説明いたしました。ゲノム動態プロジェクト 笹沼博之副参事研究員からは、近年のがん研究は、生物学と情報学を融合した新しい学問になりつつあることを、アメリカやヨーロッパ、日本で解読された大量の癌ゲノム情報から明らかになったがんの特徴に基づいて、わかりやすく説明しました。さらに乳がんを例に、がんの特徴(変異)が多くの場合DNA損傷修復の異常によって起こることを解説しました。

続いて講演された藤田先生から、細胞外から細胞内へのシグナル伝達の異常が、がんの特徴である無限増殖の大きな原因の一つになっていることを、がん関連遺伝子であるRASやEGFRを例に解説いただきました。現在、基礎研究によってRASの阻害剤が開発されており、将来RAS変異を持つがんを選択的に殺傷する分子標的治療薬が登場するであろうとのことでした。また最近のPD-L1などのがん免疫療法やCAR-T療法にも触れ、がんゲノム医療の進歩により患者の治療選択肢が増えることは望ましいことであるが、治療費の高騰は避けられず、今後、医療とコストをめぐる議論は避けて通れないであろうという言葉で締めくくりました。

笹沼研究員、藤田雅俊先生、正井所長

左から笹沼研究員、藤田雅俊先生、正井所長

ページの先頭へ