Oct. 2021 No.043
ウイルス感染プロジェクトリーダー小池 智
7月10日(土曜日)、「ポリオ根絶の戦い ‐人類はウイルスを根絶できるのか?‐」と題して、2021年度 第3回 都医学研都民講座をオンライン方式で開催しました。国立感染症研究所 ウイルス第二部 主任研究官の清水博之先生を講師にお迎えし、「世界ポリオ根絶計画の現状と残された課題」と題してお話しいただきました。不活化ワクチンと生ワクチンが開発され、1988年からWHO が進めた生ワクチンを用いた世界ポリオ根絶計画により野生株の流行はほとんど抑えられました。しかし、生ワクチン株の強毒復帰などの問題が明らかとなり、完璧な根絶の困難さが明らかになってきました。問題解決に向けたワクチン改良の取り組みについてもご解説いただきました。
続いて、ウイルス感染プロジェクトの小池智から、「ポリオ後の新たなエンテロウイルス感染症」と題してお話ししました。近年、ポリオウイルスと近縁のウイルスによって中枢神経感染症が引き起こされることがわかってきています。これらのウイルス感染症の蔓延を防ぐため、強毒化メカニズムの解明、ワクチンの開発を目的に研究を進めていることをお話ししました。
講演後のアンケートでは、ポリオ及び関連ウイルスに対するワクチン開発の経緯がよく理解できたといったご意見や、ウイルスを根絶することとウイルスと共存することの意義などについてご意見を多く頂きました。根絶間近の感染症を例にとり、感染症一般に関わる問題について都民の皆さまに話題提供することができたと思います。
左:国立感染症研究所 清水先生/右:ウイルス感染プロジェクト 小池プロジェクトリーダー