Oct. 2021 No.043
脳機能再建プロジェクトリーダー西村 幸男
6月5日(土曜日)、「限界突破を実現するテクノロジー」と題して、第2回都医学研都民講座をオンライン方式で開催しました。今回は、ソニーコンピュータサイエンス研究所リサーチャー・プログラムマネージャーの古屋晋一先生を講師にお迎えしました。
まず、当プロジェクトの田添歳樹主席研究員から、「人工神経接続の技術による脊髄損傷者の随意運動の再獲得」と題してお話ししました。脊髄損傷等により身体麻痺を引き起こした場合、動かすのが難しくなった手足で反復運動を行い、少しずつ元の運動機能を取り戻していきますが、麻痺が重度になると運動を行うこと自体が困難になります。この状況を克服し、脊髄損傷者が自らの意思で麻痺した両足を動かすことができるよう、人工神経接続という技術を用いた研究しています。
続いて古屋先生から、「神経科学とロボティクスによる音楽家のスキルの限界突破」と題してお話しいただきました。演奏家の多くは、幼少期から膨大な練習量を経て卓越したスキルを獲得していますが、最近の研究では、この獲得の割合は練習量の4割程度に過ぎないといわれているそうです。練習を重ねると脳が変わりにくい状態になり、努力だけでは限界を突破することができなくなるため、演奏家やその卵たちに、限界を突破するための脳と身体の動作原理やロボティクスに基づいたトレーニングを行っているとのことです。
講演後のアンケートでは「脊髄損傷の患者さんにとって希望が持てるお話で、今後の研究に注目したいです」といったご意見を頂きました。
脳機能再建プロジェクト 田添研究員