会場:一橋講堂
10月26日(木)、当研究所では、一橋講堂において、「認知症に向き合うために」と題して、第5回都医学研都民講座を開催しました。
今回は、大阪市立大学医学部臨床神経科学講座の特任教授で、新潟県にある田宮病院の顧問をされている、森啓先生を講師にお迎えしました。
森先生は、「認知症は、地位や職業に関係なく、どんな人でもなる可能性があり、また残念ながら特効薬が無い。」という現状をお話しされました。認知症の症状は徐々に進行し、介護する家族は様々な負担を強いられます。中核症状である認知機能の障害に加え、特に「BPSD(行動・心理症状)」と呼ばれる症状は、周囲の人との関わりのなかで起きてくるものです。これには、易怒性、暴言、脱抑制、不眠、妄想、徘徊、弄便、失禁などの様々な症状があり、家族や介護者にとっては本当に大きな負担となります。森先生は、「まず認知症の知識を正確に知ることが、患者本人にとっても、看病で困っている家族にとっても重要であること。」、そして、「発症してから人生終末を迎えるまで、10年前後の苦しい介護が続くが、逆にそれ以上の時間はないので、大切に過ごすようにしたい。」と話されました。「一番苦しい時が一番良い時かもしれない。」というお話もあり、森先生の家族を思いやる、優しい気持ちが伝わってくる素晴らしい御講演でした。
講演後の質疑応答では、「自分や家族が認知症かもしれないがどうしたらよいか。」、「薬はいつまで飲むべきか。」、「患者に対してどのように対応したらよいか。」などの質問がありましたが、一つ一つの質問に対して丁寧にお返事していただきました。
写真右:上から、森啓先生、質疑の様子、会場
写真下:控え室にて(森啓先生と当研究所 認知症プロジェクトリーダー長谷川研究員)
会場:東京都医学総合研究所
今年も夏のセミナーを開催しました。マウスを用いた、神経系への遺伝子導入技術の実習です。内容は、脳の初代神経培養法、子宮内エレクトロポレーション法、アデノ随伴ウイルス作製法に加え、今年から、脳(海馬)へのウイルス微量注入法の四つです。神経系に外来遺伝子を導入することで、神経系での遺伝子の機能や脳の働き方を明らかにすることができます。参加者は4名で、企業の創薬研究者、大学の痛みに関する研究者、大学助教(神経内科医)、薬学大学院生です。こちらは、岡戸、平井、田中、高沢、神嵜が対応しました。子宮内エレクトロポレーション法では、子宮内の胎児の扱いに習熟を要するため、初めてのことで大変かと思いましたが、皆さん熱心に取り組んでいただきました。各人の研究テーマに関して話し合う機会もあり、私にはとても楽しく有意義でした。こちらの不手際もありましたが、本セミナーが、参加者に将来少しでも役立つことを願っています。
(神経細胞分化プロジェクト プロジェクトリーダー 岡戸晴生)
写真:実習の様子
会場:東京都医学総合研究所
平成29年7月24日から27日までの4日間、恒例の夏のセミナー・神経病理ハンズオンを行いました。今年は病理2名、法医学2名、神経内科3名、精神神経科2名で、比較的若手の初学者の方が参加されました。内部講師は解析室の新井信隆副所長が務め、4日間を通して様々な症例の講義や、標本観察のレクチャーを行いました。初日は実習前に解析室スタッフの私と関絵里香技術研究員がそれぞれデジタルパソロジー総論と、各種染色法と正常像についての講義を行いました。2日目以降は外部から特別講師をお招きし、各専門分野の講義をお願いしています。2日目は埼玉医科大学病理学の石澤圭介先生にアルツハイマー病、タウオパチー、運動ニューロン疾患、前頭側頭葉変性症について、濃密なレクチャーをしていただきました。3日目は大分大学小児科の宮原弘明先生に脳の発生プロセスや、各段階での障害における表現形の形成異常病変について包括的なレクチャーと標本解説をしていただきました。最終日は毎年、防衛医科大学法医学講座の原田一樹先生に来ていただき、頭部外傷についてレクチャーをしていただいています。受講者は空き時間などに興味のある標本を熱心に観察し、講師にも積極的に質問していました。このセミナーの特徴でもあるバーチャルスライドを搭載したデジタル教材は、セミナー終了後も自宅のパソコンなどから閲覧出来るようになっていますので、セミナーの復習にお役立て頂ければ幸いです。
最後になりましたが、受講者の皆様、講師の皆様、また、マルチモニターの会場設営を全面的に担当していただいている植木さん、八木さんに感謝申し上げます。
(神経病理解析室 技術研究員 小島利香)
写真:セミナーの様子
会場:東京都医学総合研究所 他
今年のテーマは「すすめよう! 難病保健活動 ―難病を持つ人々が住み慣れた地域で暮らし続けられるために―」。
これまで我が国の難病施策は、「難病対策事業」として実施してきましたが、平成27年1月に「難病の患者に対する医療等に関する法律(通称「難病法」)が施行され、法のもとに難病施策が実施されることとなり、今年で3年目となりました。
法施行前の難病施策は、全国の都道府県あるいは保健所設置市(含む特別区)ごとにその取り組みに大きな相違がありました。法制化によって、これら取り組みの相違が少しでも解消され、難病をもつ人々の療養環境が改善することが期待されますが、そのためには「都道府県および保健所設置市(含む特別区)」に所属する保健師のみなさんの活動が大変重要となります。
プログラムは、国や都道府県における難病施策、各地域における難病保健活動に関する実践報告、難病保健活動に必要な知識や技術の習得に関する講義や演習で構成しています。毎年北海道から沖縄まで、全国の都道府県・保健所設置市(含む特別区)に所属する行政職保健師のみなさんがご参加くださいます。日頃の難病保健活動にかかる資料を持ち寄って、今後の活動の方向性について討議する場もあり、セミナー後のアンケートでは、プログラム全体について、高い評価を得ています。
「難病法」は「難病になっても、尊厳をもって、安心して住み慣れた地域で暮らし続けることができることをめざす」法律です。夏セミの1週間を終え、御参加のみなさまとわたしたちとであらたなネットワークを築きました。 難病をもつみなさんに安心して生活していただけるケアシステムの実現をめざして今後も活動していきましょう。
最後になりましたが、多くのみなさまにご指導、ご協力をいただき、セミナーを無事終えることができました。心より御礼申し上げます。
※受講生:51名 (6月12日公開プログラムの参加者:130名)
(難病ケア看護プロジェクト 主席研究員 小倉朗子)
写真右:上から、川村佐和子氏、小倉研究員
写真下:参加者によるグループ発表