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開催報告

2019年度 第6回 都医学研 都民講座 (2019年11月29日開催)
こどもと母のメンタルヘルス

統合失調症プロジェクトリーダー新井 誠

令和元年11月29日、一橋講堂において、「こどもと母のメンタルヘルス」と題して、第6 回都医学研都民講座を開催しました。今回は、名古屋大学大学院医学系研究科精神医学・親と子どもの心療学分野教授の尾崎紀夫先生を講師にお迎えしました。当日は天候にも恵まれ、多くの方々に会場へ足をお運び頂き、充実した講演会となりました。都民の方々ばかりでなく、妊産婦のメンタルヘルス研究に携わる大学や公的機関の方々、さらには当事者の方やそのご家族の方にもご参加を頂きました。遠方よりお越し頂いた方にはこの場をお借りして重ねて心より感謝を申し上げます。

ご講演では、「妊産婦のこころを知り・支える」ため、妊産婦の方々が抱えるこころの悩みを如何にして切れ目なくケアをしていくか、また、周囲の方々からの支えのあり方、声かけの尊さ、協働ケアの重要性について、尾崎先生の実臨床の具体的な事例をお示し頂きながら聴衆の皆さまへ語りかけて頂きました。2018 年12 月に成育基本法が公布され、子どもと母の心身の健康を確保するための施策を推進することとしましたが、都の妊産婦の死亡原因に関する調査では、最大の死亡原因は自死で、うつ病等のメンタルヘルスの不調が多くの割合を占めていることが報告されています。尾崎先生は、妊娠出産はとても喜ばしいことであるものの、育児への不安を感じているうちに、ものの見方が否定的になったり、母がやらなければと思いひとりで抱え込んでしまったりと思い悩み、ストレスが増えるなど、心に様々な葛藤があっても、なかなか誰にも言うことも出来ずに子育てをされる方も少なくないことを述べられました。少しでも心のエネルギーを貯めながら健康的な行動を増すなど、妊娠出産に伴うメンタルヘルスとその対処法がとても大切であることもご紹介されました。

ご講演後の質疑応答には、ご自身やご家族から母子のメンタルヘルスに関する切実なご質問を多数お寄せ頂きましたが、時間の都合もありすべてにお答えができなかったことは非常に残念なかぎりです。ご講演後のアンケートでは、「出産に向けての知恵を頂きました」といったご意見も頂き、母子のメンタルヘルスにおける諸問題について理解を深めて頂けたかと思います。

今回残念ながらご都合があわずに足をお運びいただけなった方々におかれましては、是非、次の機会にご参加頂けますことを心よりお待ち申しあげております。

質疑の様子 尾崎紀夫photo

右:尾崎紀夫先生
左:質疑の様子

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