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開催報告

2019年度 第7回 都医学研 都民講座 (2020年1月18日開催)
依存症に正しく向き合う -予防、治療、回復-

依存性物質プロジェクトリーダー池田 和隆

1月18日(土曜日)、一橋講堂において、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長の松本俊彦先生を講師にお迎えし、「依存症に正しく向き合う -予防、治療、回復-」と題して講座を開催しました。

まず、「依存症をめぐる最近の動き」と題して私が前座の講演を行いました。最近は海外だけでなく日本においても薬物乱用は深刻な問題となっています。また、世界保健機関がゲーム症を新疾患とし、また、IR法(いわゆるカジノ法)やギャンブル等依存症対策基本法が施行され、依存症や行動嗜癖への関心が高まっています。このようなことを背景に、私が委員長を務める日本学術会議のアディク ション分科会で、国への政策提言を検討したり、当研究所と国立精神・神経医療研究センター等との間で、依存症の治療薬の開発を進めたりしていることをご紹介いたしました。

続いて、松本先生に、「人はなぜ依存症になるのか -依存症からの回復のために必要なもの-」と題して、ご講演いただきました。依存症になる場合、一般的には快楽を享受するために薬物を使用すると考えられがちですが、むしろ苦痛を抱えている人の方が依存症になりやすく、回復しにくいとの調査結果があることが紹介されました。それは、薬物依存症患者の55%に精神障害があり、そのうち の9 割は薬物乱用開始前から存在していることから、精神障害による心理的苦痛が背景にあることが考えられます。また、患者にとって、薬物や酒をやめることはできても、なにより難しいのは、やめ続けることであるとの話や、患者を孤立させないように地域社会が見守り、治療・支援体制を構築していく必要があるといったことをお話しいただきました。

講演後のアンケートでは、「依存してしまう背景に、快楽ではなく、苦痛の緩和を求めることが原因にあることを知り、勉強になった。」「目からうろこが落ちた。」といった御意見を多く頂きました。

講演会場
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