Jul. 2022 No.046
社会健康医学研究センター長西田 淳志
2月25日(金曜日)、「認知症とともに生きる人の希望を支えるケア:心理社会的アプローチと家族支援」と題して、第8回都医学研都民講座をオンライン方式で開催しました。今回は、東北大学医学部・医学系研究科精神看護学分野准教授の中西三春先生を講師にお迎えしました。
中西先生は、2020年度まで当研究所に在籍され、東京都および都内自治体と連携して認知症のケアプログラムの開発と普及に携わってこられました。このケアプログラムは、認知症の人の行動心理症状をケアによって改善し、住み慣れた地域で長く暮らすことを可能にするために開発されたものです。これまで認知症の人の行動心理症状は、やっかいな「問題行動」とみなされてきました。しかし、近年の研究によって行動心理症状は、認知症の人が満たされていないニーズや思い、願いを周囲に伝えようとしている「大事なメッセージ」であると認識されるようになっています。行動心理症状の背景にある認知症の人のニーズをくみ取って、それを満たすためのケアを見つけ出すことが重要です。それを可能にする仕組みがこの認知症ケアプログラムです。中西先生らの研究によって、こうしたケアアプローチによって認知症の人の行動心理症状が顕著に改善することが明らかとなっています。
講演後のアンケートでは、「認知症が10人に1人となるというのは衝撃でした。しかし、この講座を聞いて今後訪れるかもしれない介護側、介護される側の立場を想像して、恐れる気持ちが少し和らいだように感じています。」といったご意見を多く頂きました。