2015年6月18日
米国科学雑誌「PLOS ONE(プロスワン)」オンライン版にゲノム医科学研究分野の芝崎太参事研究員らの研究成果が発表されました。
(公財)東京都医学総合研究所(理事長:前田秀雄)・芝崎 太 参事研究員は、明治薬科大学・櫻庭 均教授、シンセラ・テクノロジーズ社(代表取締役:村口 和孝)等との産学共同研究を通して、遺伝性難病であるファブリー病の治療薬Agalsidase alpha(アガルシダーゼ アルファ:レプレガルTM)、Agalsidase beta (アガルシダーゼ ベータ:ファブラザイムTM)に対する血中抗体を迅速簡易に測定する方法を開発することに成功しました。上記2つの蛋白製剤を用いたファブリー病の酵素補充療法では、これらの蛋白製剤に対する血中抗体により、アレルギーや治療効果の減弱などの有害免疫反応が見られます。本キットは血液中の阻害抗体を迅速にしかも簡易に測定でき、治療中の副作用の予測や個々の患者さんに合った治療に繋がると期待されます。
ファブリー病は、身体の代謝にとって重要な糖脂質分解酵素であるアルファ ガラクトシダーゼAlpha galactosidase: GLA) の量や質に異常があり、代謝産物が全身の臓器に蓄積することにより、激しい痛みや腎臓、心臓および脳血管障害を来たす遺伝性難病です。この疾患は、長い間有効な治療法がありませんでしたが、最近では的確な診断がなされれば、遺伝子工学で作った組換えGLA(リプレガルTM、ファブラザイムTM)を補充する酵素補充療法が可能になっています。実際に、本邦でも600人以上の患者さんたちが、この酵素補充治療を受けており、年々その数が増加傾向にあります。ファブリー病患者さんの場合、そのほとんどの方が、腎不全、心不全、心筋梗塞や脳卒中などの症状を来たすため、早期治療が必要です。
ファブリー病の治療として用いられる酵素補充療法では、高頻度に血液中にアレルギーや治療効果を減弱させる阻害抗体が出現します。これまでもこの阻害抗体を測定する方法はあったのですが、操作が煩雑で、結果を得るまでに長時間を要し、ベッドサイドで迅速に測定できるキットがなかったため、個々の患者さんに対する副作用の把握が難しい状況でした。
そこで、本研究では、血液中の治療製剤に対する血液中の阻害抗体の量を迅速にしかも簡易に測定することを目的として、イムノクロマト法を用いた迅速検査キットの開発に成功しました。この方法により、 血液1滴で20分以内にベッドサイドでも測定が可能になりました。その結果、副作用の病態解明だけでなく、酵素補充治療に伴う有害免疫反応の発生を予測し、対策を立てることが期待されます。 この研究成果は、6月17日午後2時(米国東海岸時間)6月18日午前3時(日本時間)に米国専門誌「PLOS ONE(プロスワン)」オンライン版に掲載されました。
ファブリー病は、身体の代謝にとって重要な酵素であるGLAの量や質に異常があり、激しい痛みや腎臓、心臓および脳血管障害を来たす遺伝性難病です。この疾患は、長い間有効な治療法がありませんでしたが、最近では的確な診断がなされれば、遺伝子工学で作った組換えGLAを補充する治療が可能になっています。実際に、本邦でも600人以上の患者さんたちが、この酵素補充治療を受けており、年々その数が増加傾向にあります。従来、ファブリー病はとても稀な病気であると考えられてきましたが、最近の疫学調査により、日本人約9,000人に一人という比較的高い頻度で発症する、臨床的にとても重要な疾患であることが明らかになりました。ファブリー病の原因は、GLAを作る遺伝子の異常にありますが、その遺伝子異常の種類は様々です。そして、こうした遺伝子異常の多様性により、GLAの量や質の異常も様々で、それに伴ってそれぞれのファブリー病患者さんの発症年齢や重症度も異なること、さらに、GLA異常の中には、とくに治療を必要としない「機能的異型」と呼ばれるタイプも存在することが明らかになりました。こうした機能的異型を示す人は、韓国人や日本人では、人口の0.5-1%にも及ぶといわれています。一方、ファブリー病患者さんの場合、そのほとんどの方が、腎不全、心不全、心筋梗塞や脳卒中などの症状を来たすため、早期治療が必要です。
ファブリー病の治療として用いられる酵素補充療法では、高頻度に血液中にアレルギー反応を引き起こしたり治療効果を減弱させたりする阻害抗体が出現します。2種類の酵素製剤は、別々の会社から異なった方法で製造され、使用量も異なっていたために、副作用の頻度や程度が十分に比較されていませんでした。また、これまでにもこれらの製剤使用時の血液中の阻害抗体を測定する方法はありましたが、操作が煩雑で、結果を得るまでに長時間を要し、ベッドサイドで迅速に測定できるキットがなかったため、個々の患者さんに対する副作用の迅速な把握が難しい状況でした。
そこで、本研究では、血液中の治療製剤に対する血液中の阻害抗体の量を、迅速に、しかも簡易に測定することを目的として、イムノクロマト法を用いた迅速検査キットの開発に成功しました。この方法により、血液1滴で20分以内にベッドサイドでも測定が可能になりました。
また、本研究では、国内外の主要な研究者、医師のご協力により、治療製剤であるファブラザイムとリプレガルのそれぞれ、あるいは両者の治療を受けた29名のファブリー病の患者さん、および20名の健常者の血液中の阻害抗体を通常のELISA法にて調べました。同様の方法で、新しく開発した迅速簡易イムノクロマトにて測定した結果、従来のELISA法とほぼ同様の結果が20分以内に判定でき、しかも0-8段階で抗体量が判別可能でした。これまで、上記2製剤による阻害抗体の出現の仕方がかなり異なることが予想されていましたが、実際にはどちらも同様の出現率、反応性が認められました。
今回開発したイムノクロマト法により、血液1滴で20分以内にベッドサイドでも測定が可能になりました。その結果、副作用の病態解明だけでなく、酵素補充治療に伴う有害免疫反応の発生を予測し、対策を立てることが期待されます。
(1)キット上に検体を滴下する
(2)一定時間放置する
(3)目視による定性判定する(コントロールラインを必ず確認する)