Apr. 2021 No.041
副所長・学習記憶プロジェクトリーダー齊藤 実
井ノ口先生
12月12日(土)、「記憶を創り操作することは可能か?」と題して、富山大学卓越教授の井ノ口馨先生を講師に第3回都医学研都民講座を開催しました。
しかるべき講堂などで開催するべき都民講座ですが、コロナ下での開催と言うことでオンライン開催となりました。とはいえ単にスライドを映してお話しをするだけとならぬような臨場感をもたせるため、当研究所中央映像室の協力も得て講義形式の講演を行いました。
講演では、記憶情報をコードする記憶痕跡細胞の人為的操作により、外部から記憶情報の連合や消去などが可能なことを示す実験データを紹介していただきました。また記憶の貯蔵場所が最初は海馬であったものが、時間経過とともに大脳皮質に移動していくこと、大人になっても起こる神経細胞の新生がこの記憶情報の転移を担っていること、多くの感覚刺激や自発的な運動が神経細胞新生に有用であることなどを紹介していただきました。また無意識下での脳神経活動をアイドリング状態と位置づけ、これが様々な脳高次機能の発現に果たす役割を解明しようという、最近始められた研究についても紹介がありました。「やってみなけりゃわからない」という信条のもと、歳をとるごとに斬新な研究テーマを設定し、革新的な成果を次々とあげてきた大器晩成型の井ノ口先生の研究の成果と研究に対する姿勢は、私自身も同じ研究者として見倣いたいものと大いに感銘を受けました。
左:富山大学卓越教授 井ノ口先生 右:齊藤副所長