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開催報告

第10回 都医学研シンポジウム(2020年11月27日 開催)
「ゲノム機能解析の進展とその医科学への応用」

ゲノム医学研究センター 副センター長川路 英哉

11月27日(金曜日)、「ゲノム機能解析の進展とその医科学への応用」をテーマに、第10回都医学研シンポジウムを開催しました。ヒトゲノムの塩基配列決定以降、飛躍的に進んだゲノム科学の成果を元に、ゲノム情報を医療に活用する取り組みが近年進んでいますが、ゲノムの大部分は依然として役割が不明なまま残されています。そこで本シンポジウムでは、最前線で活躍する研究者から、最新のゲノム機能解析やその医科学への応用に関する知見をご紹介いただきました

熊本大学大学院 岩本和也先生からは精神疾患を、都立駒込病院での診療も担当されている東京薬科大学 原田浩徳先生からは血液がんの一種である骨髄異形成症候群を、大阪大学 橋本浩介先生からは疾患ではなく特別に長生きをされた方々を切り口としたゲノム・遺伝子解析研究をご紹介いただきました。先天的ゲノムDNA変異でない体細胞変異の解析や、DNA塩基配列置換を伴わないエピゲノム変化、細胞一つずつからの遺伝子発現測定といった様々な解析手法を用いて、患者症例や長寿の方におけるゲノム・遺伝子の特徴が次々と示され、ゲノム機能研究の幅広さと有効性を垣間見ることができました。また、京都大学 井上詞貴先生や筆者からは遺伝子発現調節領域の機能解析手法である大規模並列レポーターアッセイやCAGE(Cap Analysis of Gene Expression)が紹介されると共に疾患研究への応用例が提示され、ゲノム機能研究の更なる可能性を展望することができました。

筆者としても得るものの多い時間となりましたが、これは参加者にとっても同様であったことがアンケート結果より見て取れました。新型コロナウイルス感染拡大をうけ止むを得ずオンライン方式での開催となりましたが、想定外にも「オンラインが良かった」という声が多数あり、ゲノム機能研究にとってもシンポジウム開催方法の観点からも、新型コロナウイルス感染収束後の活動に刺激を与える意義深いシンポジウムになったと思います。

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川路 副センター長

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