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思春期の時点で抱いていた価値意識が高齢期の幸福感を予測する
~60年以上にわたる大規模コホート調査によるエビデンス~

社会健康医学研究センターの山﨑修道副参事研究員、西田淳志センター長らは「思春期の時点で抱いていた価値意識が高齢期の幸福感を予測する ~60年以上にわたる大規模コホート調査によるエビデンス~」について英国科学誌The Journal of Positive Psychologyに発表しました。

社会健康医学研究センター 心の健康ユニット 副参事研究員山﨑 修道


研究の背景

世界人口の高齢化にともない、高齢期の幸福感を支える要因の解明に国際的関心が集まっています。特に、出生から高齢期までの人生を連続的に俯瞰し、若い頃のライフステージ(思春期・青年期など)のどのような要因が高齢期の幸福感を高めるのか、そうした問いを人生縦断的な実証研究(ライフコース疫学研究)によって明らかにすることが期待されています。

世界最長コホートデータの分析

社会健康医学研究センターでは、ロンドン大学と共同研究を行い、第二次世界大戦直後に英国全土で開始され60年以上にわたって継続されてきた大規模追跡調査のデータを分析し、思春期の時点で抱いていた価値意識が、高齢期の幸福感を予測することを世界ではじめて明らかにしました。

思春期の価値意識と自己コントロール力が高齢期の幸福感に影響する

思春期は、成人した後の人生のあり方に大きな影響を与える時期ですが、思春期の何が高齢期の幸福感に影響を与えるか、今まで実証的には明らかになっていませんでした。
今回の分析により、思春期の時点で抱いていた「興味や好奇心を大切にしたい」という価値意識(内発的動機)が強いと、高齢期の幸福感が高まり、「金銭や安定した地位を大切にしたい」という価値意識(外発的動機)が強いと、幸福感が低くなることを明らかにしました。親の社会経済的地位や、本人の学歴によらず、この関係が認められました。加えて、自己コントロール力が低く生きづらさを抱えやすい若者が、外発的動機が強い場合は、高齢期の幸福感の指標である人生満足感が顕著に低くなることが分かりました(図)。

若者支援施策への示唆

若者に対して経済的な成功や安定を目指すように強調するよりも、自身の興味や好奇心をはぐくむ教育環境を作っていくことが、活力ある超高齢化社会の実現に向けて重要な対策であると示唆されます。今後は、どのような教育施策が若者一人一人の興味・好奇心を支えるために有効なのか、長期追跡研究から明らかにしていく必要があります。

図

図.

自己コントロール力が低い若者(オレンジ色)が、外発的動機を強く抱いた場合、高齢期の人生満足度が顕著に低くなる。

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