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メチルグリオキサール除去機構の障害が統合失調症様行動異常を生じるメカニズムを解明

統合失調症プロジェクト 主任研究員鳥海 和也

メチルグリオキサール(MG)は、糖代謝の副産物として生じる反応性・毒性の高い物質であり、様々な組織や臓器の損傷や障害を引き起こします。私たちはこれまで統合失調症患者において、このMGの解毒酵素であるGlyoxalase 1 (GLO1)の機能障害を有し、またMG除去機能をもつビタミンB6(VB6)濃度が低い一群がいることを報告してきました。これらMG解毒機構の障害はMG蓄積を引き起こし、統合失調症病態に関与している可能性がありますが、その障害分子機序については分かっていませんでした。

本研究では、Glo1ノックアウト(KO)マウスにVB6欠乏餌を与えることで、病態を反映した新たなモデルマウスを作成し、MG解毒機構の障害が脳機能に及ぼす影響を評価しました。その結果、VB6欠乏餌を給餌したGlo1 KOマウス(KO/VB6(-))では、脳内におけるMG蓄積が認められ、プレパルスインヒビション障害などの統合失調症様行動障害を示しました。また、KO/VB6(-)マウスの前頭前皮質(PFC)では、ミトコンドリア機能関連遺伝子の発現異常が生じており、実際にミトコンドリアの呼吸鎖障害、及びそれに伴う酸化ストレスが亢進していることが明らかとなりました。

メチルグリオキサール除去機構の障害が統合失調症様行動異常を生じるメカニズム
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