HOME刊行物 > Jan 2022 No.044

Topics

AGEsは思春期児童における精神病体験の持続と関連する

統合失調症プロジェクト 主席研究員宮下 光弘

私たちはAGEs1)の値が統合失調症患者さんの血液中で高いことを見つけましたが、AGEsの値が発症前から高いかどうか、わかりませんでした。そこで、東京ティーンコホートと協力して282名の思春期児童を対象にして研究を行いました。

研究では、痛みを伴うことなくAGEsを測定し、面接を行って精神病体験2) を評価しました。AGEsの測定と精神病体験の評価は、1年の間隔をあけて2回行いました。282名のうち、2回とも精神病体験が無かった児童(精神病無し群)が200名(70.9%)、どちらか1回だけ精神病体験があった児童(一過性精神病群)が67名(23.8%)、2回とも精神病体験があった児童(持続精神病群)が15名(5.3%)でした(図A)。次に、治療薬を内服している5名の児童を除外して、AGEsと各群の関連を解析した結果、AGEsの値が高いと持続精神病群のリスクが高まることがわかりました(図B)。

持続精神病群は統合失調症発症のリスクになります。今回の研究では、発症リスクが高い思春期児童(持続精神病群)では、治療薬を飲む前からAGEsの値が高いことを明らかにしました。AGEsの値を知ることで、発症リスクが高い児童の早期発見と適切な介入が期待されます。

<用語解説>

1)AGEs:
終末糖化産物。老化や糖尿病等さまざまな疾患との関連が指摘されている。
2)精神病体験:
現実に存在しないものを感じること(幻覚)や事実ではないことを勘ぐってしまうこと(妄想)を指し、思春期の一般人口では6人に1人が経験する。
AGEsは思春期児童における精神病体験の持続と関連する
ページの先頭へ