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ケモカインがDNAと結合して自然免疫を活性化する仕組みを解明

幹細胞プロジェクト 主席研究員種子島 幸祐

私たちはケモカインの一種であるCXCL14が細菌のDNAに多く含まれるDNA配列 (CpG DNA) に結合し、樹状細胞への取り込みの促進を介して、自然免疫の誘導や炎症反応を大幅に増強するという新たな機能について研究してきました。

本研究では、CXCL14はCpG DNAと細胞表面受容体への結合ドメインの両方を持ち、CXCL14/CpG DNAの複合体が、クラスリン依存性エンドサイトーシス経路により、樹状細胞へ取り込まれることがCpG DNAの活性増強に必要であることを初めて明らかにしました。また、CXCL14/CpG DNAの結合をシミュレーションにより解析し、CXCL14のN末端側とC末端側の複数のアミノ酸が協調的に働いて結合を安定化していることが示されました (図)。

CXCL14とCpG DNAはどちらもがん免疫の増強に関連することが知られています。また、CXCL14とCpG DNAによる樹状細胞の活性化は、ワクチンの効果を高めるワクチンアジュバントとしての機能が期待されます。本研究成果を足がかりとして、CXCL14とCpG DNAの協調的な作用がさらに解明されれば、より効率の良いがん免疫増強剤やワクチンアジュバントの開発につながる可能性があります。

CpG DNAとCXCL14の結合様式のシミュレーション

図 CpG DNAとCXCL14の結合様式のシミュレーション

CpG DNAのリン酸基が、N末端側のCXCL14のアミノ酸 (R7, K8, R11)とC末端側のアミノ酸 (S57, R60)によって認識される様子がシミュレーションにより示され、実際の実験データでも、N末端側とC末端側のアミノ酸が協調的に働いていることが明らかとなった
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