− この都医学研セミナーは終了しました。 −
演者 | 隈元 拓馬 Sorbonne Université, Institut de la Vision, Jean LIVET Lab(研究員) |
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会場 | 東京都医学総合研究所 2階BC会議室 |
日時 | 2020年1月24日(金) 16:00〜17:00 |
世話人 | 丸山 千秋 神経回路形成プロジェクトリーダー |
参加自由 | 詳細は下記問合せ先まで |
お問い合わせ |
研究推進課 普及広報係 電話 03-5316-3109 |
目的遺伝子を細胞に導入し、ゲノムに組み込み発現させる遺伝子導入は生物学研究全般で広く用いられ、遺伝子改変生物に変わる一過的な手法が近年使用されている。しかしながら従来のDNAベクターによる遺伝子発現には、ゲノムに挿入されない「エピソーマル発現」が生じてしまう。このエピソーマル発現は一過的に生じる過剰発現で、その発現量は非常にばらつき、細胞生存率にも影響を与える。今回我々はこのエピソーマル発現を抑え、ゲノム挿入依存的に発現を開始する新しいタイプの遺伝スイッチ「iOn switch」を開発した(Kumamoto et al., bioRxiv, 2019)。
セミナーの前半では、iOn switchの原理を、他の既存のベクターシステムと比較しながら紹介する。後半ではiOn switchを用いて我々が行ったアプリケーションの一部を紹介する。In vitro実験系では、transgenic stable cellsを簡便に効率よく樹立する方法を、培養細胞、マウスES細胞、ヒトiPS細胞を用いた例から紹介したい。In vivo実験系では、神経幹細胞を標的としたゲノム由来発現をマウス脳・眼、ニワトリ脊髄・眼を用いて紹介する。例えば、3色のiOn switchを用いたmultiplex lineage tracingやleak-proofなゲノム挿入依存的Cre-loxシステム「iOnCre」による細胞種特異的な系譜解析、in vivo mosaic解析など従来のベクターでは不可能だったことを可能にしてきたiOn switchによるin vivoアプリケーションを紹介したい。
これらの結果より、iOn switchは原理的に遺伝子導入できるすべての種・組織に使用でき、一過的な遺伝子導入で遺伝子改変生物並みの解析(Direct Transgenesis)を可能にした遺伝スイッチで、基礎医学研究を含めた既存の生物学研究のスピードを大きく促進できる可能性を秘めた、新たな遺伝ツールであるといえる。