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演者 | 村松 憲 杏林大学保健学部 理学療法学科(准教授) |
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会場 | 東京都医学総合研究所 2階BC会議室 |
日時 | 2019年12月19日(木) 16:00〜 |
世話人 | 三五 一憲 糖尿病性神経障害プロジェクトリーダー |
参加自由 | 詳細は下記問合せ先まで |
お問い合わせ |
研究推進課 普及広報係 電話 03-5316-3109 |
糖尿病患者には糖尿病性神経障害(diabetic neuropathy)と呼ばれる末梢神経障害が生じる一方、血液脳関門が存在する中枢神経系は高血糖の影響を受け難いと考えられてきた。そのため、糖尿病患者にはバランス障害などの運動障害が生じるものの、その原因は末梢神経や筋実質の障害ばかりに求められ、中枢神経系について議論されることはなかった。しかし、近年、1型糖尿病モデル動物の随意運動を制御する脳内のシステム(運動系)について解析を行った結果、脊髄の運動ニューロンや運動野に起始する錐体路などにも障害が生じていることが明らかになってきた。具体的に述べると、脊髄レベルでは四肢遠位部の筋紡錘を支配するγ運動ニューロンに障害が生じ、さらに上位中枢では腰仙髄に投射する錐体路細胞の軸索に損傷が生じて、一次運動野の後肢、体幹領域を中心に運動野の萎縮が生じることがわかった。一連の研究結果は高血糖の影響が末梢神経だけでなく中枢神経にも及ぶという新しい概念を提唱するものだけでなく、末梢神経や筋実質ばかりに求められてきた糖尿病患者の運動障害に中枢神経系の異常が関与することを示唆するものである。そして、現在、我々は糖尿病に関連する中枢神経障害からの回復を促す運動療法の可能性について検討していて、スキルトレーニングが運動野機能の回復に有効であることを明らかにしつつある。