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演者 | 水谷 隆太 東海大学 工学部 生命化学科(教授) |
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会場 | 東京都医学総合研究所 2階講堂 |
日時 | 2019年11月11日(月) 16:00~ |
世話人 | 池田 和隆(依存性薬物プロジェクト)・ 新井 誠(統合失調症プロジェクト) |
参加自由 | 詳細は下記問合せ先まで |
お問い合わせ |
研究推進課 普及広報係 電話 03-5316-3109 |
放射光ナノトモグラフィ法は、CTスキャンの原理により、ナノメータースケールで三次元構造を可視化する手法である。これまで、医学・生物学分野への応用を開拓してきたが、最近、統合失調症例の解析から興味深い知見を得たので、それを中心にご紹介したい。放射光は荷電粒子を加速することで得られる高輝度の光であり、その中でも特にX線が様々な分野の研究に用いられている。我々は、そのような実験を行う施設として、大型放射光施設SPring-8と、米国アルゴンヌ国立研究所Advanced Photon Sourceを利用し、ヒト・マウス・ショウジョウバエ等、様々な検体の三次元解析を行ってきた。本講演では、それら施設での測定の実際をご紹介するとともに、これまでの成果の中から、統合失調症例の脳組織の三次元構造などを報告する。また、構造解析においては、三次元データを定量的に評価することが重要となる。そこで我々は、神経突起の解析に微分幾何学を応用し、構造上の特徴を抽出した。その結果、神経突起の曲率が各個人固有の分布をもち、統合失調症例では対照例の約1.5倍の曲率を示すことが明らかとなった。これは、ヒト組織の構造が、個人ごとに非常に緻密に作られていることを表しており、現在は原因不明の疾患が、組織の三次元構造に起因する可能性を示唆している。