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演者 | 落谷 孝広 東京医科大学 医学総合研究所 分子細胞治療研究部門(教授) |
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会場 | 東京都医学総合研究所 2階講堂 |
日時 | 2019年7月5日(金) 16:00〜 |
世話人 | 感染制御プロジェクト 小原 道法 |
参加自由 | 詳細は下記問合せ先まで |
お問い合わせ |
研究推進課 普及広報係 電話 03-5316-3109 |
体液診断(liquid biopsy)の急速な進歩に伴い、EVs(細胞外小胞)を疾患に対する診断へ利用する研究が世界中で進められている。このEVsの代表格であるエクソソームは、血液、尿、唾液、母乳など様々な体液に存在し、また疾患特異的なエクソソームには、疾患特異的な分子が濃縮されている。つまりコンパニオン診断としてエクソソームに濃縮された分子を利用することで、個別化医療の促進が期待できる。さらに、エクソソームは、がんの様々な病態、特に薬剤抵抗性や転移そのものを制御している事実が次々と明らかにされ、がん転移の治療標的としての可能性が生まれた(総説:Kosaka et al., J Clin Invest, 2016)。我々も乳がんの晩期再発には骨髄中の間葉系幹細胞のエクソソームが関係していること (Ono et al., Sci Signal, 2014)や、乳がんの脳転移においては、がん細胞のエクソソームが脳血管内皮細胞に取り込まれた結果、血液脳関門を破綻させることで、がん細胞の脳内への侵入を許すこと(Tominaga et al., Nat Commun, 2015)、さらに卵巣がんでは腹膜播種形成において、卵巣がん細胞のエクソソームが腹膜中皮細胞に取り込まれた結果、その細胞のアポトーシスを誘導することで、腹膜播種の起点となることなどを証明してきた(Yokoi et al., Nat Commun, 2017)。つまり、転移の重要な手段となっているエクソソームを制御することで、転移の制御が可能であることを実験的に証明している。事実、エクソソームの中和抗体による処理が、動物モデルでの転移を抑制することも可能であった(Nishida et al., Mol Ther, 2017)。また最近では、再生医療の分野において、このエクソソームの効果がかなり明確になり、欧州では、難聴疾患に対するfirst in humanの結果も報告されている。本講演では、細胞間情報伝達の新たな武器となるエクソソームのバイオロジーを概観し、今後の医生物学分野への新たな挑戦の例をご紹介したい。