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生きたヒト三次元神経組織の創出を可能とする神経オルガノイド研究
〜海馬オルガノイドによる精神疾患モデリング〜

演者 坂口 秀哉
国立成育医療研究センター 精密創薬研究部 実験薬理研究室
室長
会場 対面式(講堂)
日時 2026年3月4日(水曜日)16:00~17:00
世話人 宮岡 佑一郎
再生医療プロジェクト
参加方法 詳細は事前に下記問合せ先までご連絡ください
お問い合わせ 研究推進課 普及広報係
電話 03-5316-3109

講演要旨

大脳や海馬を含む終脳は中枢神経の中でも特に複雑な構造と機能を有する部位にあたり、大脳・海馬における神経活動の機能障害はさまざまな精神神経疾患を引き起こすことが知られている。このような神経領域の障害を対象とした研究は数多く進められているが、特にヒト細胞・組織を対象とした研究は生体のヒト神経組織へのアプローチが困難であるため難しく、信頼出来るヒト神経モデルの創出が望まれる。この問題に対して、ヒトの神経領域を3次元組織として多能性幹細胞から分化誘導できれば、複雑なヒトの脳発生のモデルを提供できるだけでなく、疾患メカニズムなどの解析や、移植による細胞治療へも応用できると考えられる。

我々はこれまでに、胚性幹細胞(ES細胞)やiPS細胞を用いた3次元培養系によって中枢神経系の組織発生の再現に挑戦し、ヒトES/iPS細胞から大脳皮質、海馬、脈絡叢、脊髄などの組織の分化誘導に成功してきた(Eiraku et al. 2008, Kadoshima et al. 2013, Sakaguchi et al. 2015, Ogura and Sakaguchi et al. 2018, Sakaguchi et al. 2019)。このような生体内の3次元構造を保って分化誘導された神経組織は神経オルガノイドと呼ばれるようになり、神経オルガノイドという操作可能な3次元ヒト神経組織によって、これまでに研究対象とすることが難しかったヒト神経疾患の本質的なメカニズム解明や細胞レベルの神経機能解析へのアプローチが可能となると期待されている。

本講演では、当該分野の歴史を俯瞰しつつ、我々が確立した無血清凝集浮遊培養法による神経オルガノイド研究のなかでも、海馬領域を発生学の知見をもとに分化誘導するステップの紹介と、包括的な神経機能解析の研究を紹介する。そして近年進めている海馬オルガノイドを用いた精神疾患モデリング研究について紹介する。神経オルガノイド技術の将来的な疾患研究への応用可能性やオルガノイド医学としての将来展望を共有したい。