| 演者 | 小野 和也 大阪大学医学系研究科 統合薬理学 助教 |
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| 会場 | 対面式(講堂) |
| 日時 | 2026年 → 3月13日(金曜日)14:00~15:30 となりました。 |
| 世話人 | 吉川 欣亮 難聴プロジェクト |
| 参加方法 | 詳細は事前に下記問合せ先までご連絡ください |
| お問い合わせ |
研究推進課 普及広報係 電話 03-5316-3109 |
生まれつきの難聴、いわゆる先天性難聴は、およそ1000人に1人の割合で出生時から認められ、その約半数は遺伝的要因に起因すると考えられる。しかし現在でも、その原因遺伝子の多くは未解明のままである。本研究では、新たな難聴の原因候補遺伝子を同定したので紹介する。近年、私たちの研究グループは、発生期の聴覚器に特異的かつ顕著に発現する遺伝子として、Sparc-related modular calcium binding 1および2(Smoc1、Smoc2)に注目してきた。SmocはBM40ファミリーに属する細胞外基質タンパク質で、発生、疾患、創傷治癒など多様な生命現象に関与することが知られる。特にSmoc1は、眼や指の形成異常を特徴とする希少疾患の原因遺伝子として知られており、一部の患者では難聴を伴うことも報告される。さらに近年では、アルツハイマー病との関連も示唆され、その生理的役割が注目される。そこで本研究では、モデルマウスを用いて、聴覚系の形成および聴覚機能におけるSmoc1およびSmoc2の役割を解析した。その結果、Smoc2欠損マウスでは聴力に明らかな異常は認められなかった一方、Smoc1欠損マウスでは重度の難聴が生じることが明らかとなった。形態学的解析から、この難聴は感覚細胞の異常ではなく、耳小骨、骨迷路、中耳腔といった伝音に関与する構造の形成不全に起因することが示唆された。さらに、Smoc1と同時にSmoc2を欠損させることで内耳構造の破綻が増悪したことから、両遺伝子の冗長的な相互作用が示された。本講演では、これらの基礎的知見に加え、本邦において極めて希少な患者の同定の可能性や、これまで見過ごされてきた潜在的な前庭機能異常についても考察したい。