東京都医学総合研究所のTopics(研究成果や受賞等)

HOMETopics 2016年

TOPICS 2016

2016年3月2日

英国科学誌「Human Molecular Genetics」に、哺乳類遺伝プロジェクト吉川欣亮副参事研究員、多屋長治副参事研究員、設楽浩志研究員、宮坂勇輝研修生らの論文が発表されました。

マウスモデルとゲノム編集技術を用いて優性難聴の発症メカニズムを解明

本研究に関する論文が英国科学誌「Human Molecular Genetics」に掲載されました。
http://hmg.oxfordjournals.org/content/early/2016/03/01/hmg.ddw078.long

目的

難聴は1,000人に1人と高頻度で発症する感覚器疾患です。近年、難聴発症の原因となる変異は多くの患者で発見されていますが、同一の難聴発症原因遺伝子に生じた類似した変異でもその病態が大きく異なることが報告されています。その原因は各個人の「遺伝的背景」、すなわちゲノムの多型の違いが難聴発症原因遺伝子と関連することが昔から推定されていましたが、その証明はなされていませんでした。そこで私たちは難聴モデルマウスを用いてこの現象を検証しました。

内容

私たちは難聴モデルマウスの一系統であり、ヒト難聴の発症原因遺伝子であるSans遺伝子変異が劣性ホモの状態で重度難聴を発症するジャクソンシェーカー(js)マウスが、ヘテロ変異でも早発型の優性難聴を発症することを明らかにし、同時にjsマウスの難聴は、交配するマウス系統によってその病態が大きく異なることを見出しました。そこで私たちは順遺伝学的解析を実施し、優性難聴発症に関与する遺伝子座、カドヘリン23(Cdh23)を同定しました。さらに私たちは、Cdh23に存在するマウス間のDNA変異をゲノム編集によって修復しました。その結果、jsマウスの難聴発症は完全に回復しました。これらの実験結果から、私たちはjsヘテロマウスの早発型進行性難聴の発症が2つの遺伝子に生じた変異の相互作用効果によって成立することを塩基置換レベルで実証することに成功しました。

参考図

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