2018年4月8日
心の健康プロジェクトの西田淳志副参事研究員らが「Journal of Psychiatry Research」に「初回エピソード精神病に対する初期包括支援サービスの効果検証:多施設共同ランダム比較試験(J-CAP Study)」について発表しました。
統合失調症などの精神病性疾患を発症した若者とそのご家族に対して、薬物療法のみならず包括的な心理・社会的ケアを提供し、発病後の混乱期の回復を効果的に支えるサービスの必要性が国際的に指摘されています。私たちは、統合失調症の発病を経験している若者とそのご家族への初期包括支援サービス(Early Intervention Service)を英国の研究チームと共同開発し、 その効果をランダム化比較試験によって検証する我が国初となる多施設共同臨床試験を実施しました。
当研究所が中心となり、都立松沢病院や東大病院など全国5つの臨床施設と連携し、初期包括支援サービスの効果をランダム化比較試験によって検証しました。まず、英国の研究チームと共同で初期包括支援サービスを提供する人材研修プログラムを開発しました。その後、15~35歳の精神病性疾患の発病を初めて経験されている方77名を、初期包括支援サービス利用群と通常サービス利用群とに無作為割付をし、1.5年後の症状や機能の回復、治療継続の状況を検証しました。初期包括支援サービスでは、医師とともに認知行動療法や就労支援、家族支援などを提供できるケースマネージャー(看護師やPSW, OTなど)が若者とそのご家族の支援を継続的に担当します。
初期包括支援サービスを利用した群では、通常サービスを利用した群に比べて、治療開始後1.5年時点の症状寛解率(顕著な精神症状が半年以上見られない状態)が6.3倍と高く、治療脱落率は0.04倍と低いことが明らかとなりました。
統合失調症をはじめとする精神病性疾患を発病した若者とそのご家族に対して、積極的な心理社会的支援を含む初期包括的支援サービスを提供することによって、良好な治療関係の維持や症状回復に有意な効果が認められることが明らかとなりました。こうしたエビデンスに基づくサービスが今後、東京都や全国に普及することが可能となれば、統合失調症などの重症化予防に貢献できると考えられます。