2018年4月17日
「Nucleic Acids Research」に再生医療プロジェクトの宮岡佑一郎研究員らの研究チームは「CRISPR/Cas9によるDNA組換えを介した正確なゲノム編集を促進する条件を発見」について発表しました。
あらゆる生物種での遺伝情報の改変を可能にするCRISPR/Cas9を用いたゲノム編集は、医療や農業・畜産などの幅広い分野での応用が進められている。CRISPR/Cas9は、ゲノムの標的部位を特異的に切断し、ランダムなDNAの挿入・欠失を引き起こすNHEJと、鋳型DNAとゲノムDNAの組換えを介して正確にDNAを修復するHDRという、2種類のDNA修復機構を介してゲノムを編集する。HDRは正確なゲノム編集をもたらすが、CRISPR/Cas9は常にランダムなNHEJを生成してしまう。そこで私達は、CRISPR/Cas9によって誘導されるHDRとNHEJのバランスがどのように決定されるかの解明を目指した。
私達が独自に開発したデジタルPCRによるHDRを介した一塩基置換導入の検出法、およびHDRを介した遺伝子カセットのノックイン効率を測定する手法を駆使した結果、DNAとの相互作用様式を改変したCas9改変体、および改変型gRNAが、通常のCRISPR/Cas9よりも高いHDR/NHEJ比をもたらすことを見出した。私達の結果は、CRISPR/Cas9とゲノムDNAの相互作用を人工的に調節することにより、HDRを介したより正確なゲノム編集技術を確立できる可能性を示している。