東京都医学総合研究所のTopics(研究成果や受賞等)

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2023年1月31日
ゲノム動態プロジェクトのYang Chi-Chun研究員、正井久雄所長らは「Claspinは、PI3K-PDK1-mTOR経路の制御を介して血清飢餓からの増殖再開に必須の役割を果たす」についてMol. Cell. Biol に発表しました。

Claspinは、PI3K-PDK1-mTOR経路の制御を介して血清飢餓からの増殖再開に必須の役割を果たす

<論文名>
“Claspin is Required for Growth Recovery from Serum Starvation through Regulating the PI3K-PDK1-mTOR Pathway in Mammalian Cells.”
(Claspinは、PI3K-PDK1-mTOR経路の制御を介して血清飢餓からの増殖再開に必須の役割を果たす)
<発表雑誌>
Mol. Cell. Biol.
doi:10.1080/10985549.2022.2160598.

当研究所 ゲノム動態プロジェクトのYang Chi-Chun研究員、正井久雄所長らは「Claspinは、PI3K-PDK1-mTOR経路の制御を介して血清飢餓からの増殖再開に必須の役割を果たす」と題した論文を米国科学雑誌Mol. Cell. Biol.誌に発表しました。

Claspinは、複製ストレスに対する細胞応答の仲介、レプリソーム因子として複製フォーク進行の促進、およびCdc7キナーゼを介した複製開始促進など、DNA複製の様々なステップに重要な役割を果たしています。本論文では、ClaspinがPI3キナーゼ(PI3K)-PDK1-Akt-mTOR経路の活性化を介して血清飢餓からの増殖再開始において、必須な役割を果たすことを報告しました。血清再添加による増殖再開時、Claspinが欠損すると、細胞はS期に進まず、最終的にROS(活性酸素)を蓄積し、p53依存性の細胞死に至ります。Claspinは、増殖誘導時のPI3K-PDK1-mTOR経路およびmTOR下流因子p70S6K/4EBP1の活性化に必須であることを見出しました。

  • Claspinは、そのCKBD(Chk1 結合ドメイン)領域を介してそのリン酸化に依存してPDK1と物理的に相互作用する。
  • PDK1は、Claspinをリン酸化し、そのリン酸化に依存してmTORがClaspinに結合する。
  • Claspinは、PI3Kにも直接結合し、mTOR経路を活性化することで栄養による増殖/生存信号の重要な制御因子として機能を果たす。
  • これらの結果はまた、Claspinが異なるPI3K関連キナーゼから信号を受け取り、特定の下流キナーゼに伝達する共通の仲介因子として機能する可能性を示唆する。
  • 複製チェックポイント経路においては、Claspinはリン酸化されたCKBDを介して、Chk1をリクルートし、Chk1を活性化する。今回の発見により、mTOR経路活性化においては、ClaspinはCKBDを介してPDK1をリクルートし、活性化し、さらにPDK1が、Claspinリン酸化を介して、mTORをリクルート、活性化する可能性が示された。これは、Claspinが異なる分子をリクルートすることにより、種々のシグナル伝達経路を統合的に制御する可能性を示唆する。
Claspinは、細胞のDNA複製ストレス応答の仲介分子として、脂質キナーゼの一つであるATRを活性化し、さらにCKBDを介してChk1を活性化する。一方、血清飢餓からの増殖開始時には、同じく脂質キナーゼであるPI3 kinaseが活性化され、 ClaspinはCKBDを介してPDK1をリクルートし、mTOR経路の活性化に重要な役割を果たす。

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