東京都医学総合研究所のTopics(研究成果や受賞等)

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2023年5月15日
再生医療プロジェクトの中島一徹研修生、小野輝美研修生(当時)と宮岡佑一郎プロジェクトリーダーらは「ゲノム編集iPS細胞の移植による治療分子の生体内供給」についてCell Transplantation に発表しました。

English page

ゲノム編集iPS細胞の移植による治療分子の生体内供給


<論文名>
In Vivo Delivery of Therapeutic Molecules by Transplantation of Genome-Edited Induced Pluripotent Stem Cells”
<発表雑誌>
Cell Transplantation
DOI: https://doi.org/10.1177/09636897231173734

背景・目的

iPS細胞の移植治療には大きな期待が寄せられ、iPS細胞由来の網膜細胞移植や神経細胞移植など、いくつかの細胞種で治験が進められている。これまでの移植は、全て健常者由来のiPS細胞を用いているが、将来的にはゲノム編集による遺伝情報改変を介して、治療効果を高めたiPS細胞の移植治療も期待される。そこで私達はその先がけとして、リソソーム酵素であるα-ガラクトシダーゼ(GLA)が遺伝的に欠損、または活性が低下することで発症するファブリー病のモデルマウスに、ゲノム編集したiPS細胞を移植し、治療分子を生体内で供給できるかを検討した。より具体的には、ファブリー病治療のために、免疫反応を起こさずに失われたGLA活性を補うことができる、改変型α-N-アセチルグルコサミニターゼ(mNAGA)を分泌するiPS細胞をモデルマウスに移植し、その治療効果を検証した。

iPS細胞
iPS細胞

方法・結果

再生医療プロジェクトの中島一徹研修生、小野輝美研修生(当時)と宮岡佑一郎プロジェクトリーダーは、遺伝子改変動物室の設楽浩志室長と明治薬科大学の櫻庭均教授、兎川忠靖教授の協力のもと、mNAGAを発現、分泌するiPS細胞をゲノム編集により作製した。まず、作製したmNAGA発現iPS細胞とファブリー病モデルiPS細胞を共培養したところ、mNAGA発現iPS細胞からファブリー病モデル細胞に、GLA活性が供給できることを確認した。次に、mNAGAを分泌するiPS細胞を、ファブリー病モデルマウスに移植したところ、肝臓においてGLA活性の回復が認められた。本研究により、ゲノム編集iPS細胞移植による治療因子の生体内供給の可能性が示された。本研究はファブリー病に着目したが、本研究の成果は他の疾患にも応用が期待される。

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