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開催報告

2021年度 第7回 都医学研都民講座(2022年1月21日 開催)
「スギ花粉症の治療と研究の最近の動向」

前花粉症研究室長廣井 隆親

1月21日(金曜日)、「スギ花粉症の治療と研究の最近の動向」と題して、第7回都医学研都民講座をオンライン方式で開催しました。今回は、日本医科大学耳鼻咽喉科准教授の後藤穣先生を講師にお迎えしました。

まず、当研究所花粉症研究室の佐伯真弓主席研究員から、「舌下免疫療法が効くしくみを探る」と題してお話ししました。舌下免疫療法は、原因となる抗原を繰り返し投与することで、その抗原に対する感受性を低下させる療法です。この舌下免疫療法は、スギ花粉症の根治療法として有用ですが、治療期間が3年以上も必要な上に、30%程度の患者さんでは効果がみられないという問題点もあります。これを改善するには、事前に治療の効き具合等が予測できるようにすることが必要です。現在でも、舌下免疫療法が効くメカニズムは明らかになっていないため、治療の効果のあった患者さんとなかった患者さんの血液サンプルを用いて、どのような因子が作用しているのか分析しているとお話ししました。

続いて、後藤先生から、「舌下免疫療法による根治を目指した治療」と題してお話しいただきました。花粉症等のアレルギー性鼻炎の治療には、大きく分けて、抗原除去・回避、薬物療法、アレルゲン免疫療法及び手術の4種類があります。このうち、アレルゲン免疫療法に含まれる舌下免疫療法は、疼痛がなく、自宅で投与でき、副反応の多くが局所反応のみ、といった多くの長所があることから、日本でも普及してきているとのことでした。また、舌下免疫療法の適用範囲は当初は成人だけでしたが、現在では小児にも拡大されたそうです。臨床試験では、3年間にわたる治療を終え、服薬をやめた後でも症状の改善が続いたことから、舌下免疫療法は根治療法になる可能性があることをお話しいただきました。講演後のアンケートでは、「今回の内容を家族と共有し、舌下免疫療法を受けてみたいと強く思いました。」といったご意見を頂きました。

廣井室長、日本医科大学 後藤先生

左)廣井室長、右)日本医科大学 後藤先生

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