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C型肝炎ウイルスを抑制する新たな脂質代謝の仕組みを発見

感染制御プロジェクト 主席研究員山根 大典

C型肝炎ウイルス(HCV)は持続感染することで慢性肝炎を引き起こし、肝硬変や肝癌を引き起こす病原体です。近年、抗ウイルス薬による治癒率が向上した一方、現在も5,800万人もの感染者が世界に存在し、関連疾患について解決すべき問題が多く残されています。

今回私たちはHCV複製を抑制する脂質代謝経路を詳細に調べました。その結果、脂肪酸を不飽和化する酵素であるFADS2が肝細胞内の多価不飽和脂肪酸の蓄積を促進し、それにより脂質過酸化が誘導されることでHCV複製が強力に抑制されることを明らかにしました。さらに、フェロトーシス誘導剤*と呼ばれる脂質過酸化を誘導する薬剤が抗ウイルス剤の効果を顕著に高める機能を持つことを見出しました(図)。本研究により、フェロトーシス誘導剤による抗ウイルス作用がはじめて示されたことから、今後フェロトーシスを標的とした新たな抗ウイルス療法の開発へと繋がることが期待されます。

用語解説

*フェロトーシス誘導剤:細胞内の酸化ストレスを高めることでフェロトーシスと呼ばれる鉄依存的な脂質過酸化の蓄積に起因する細胞死を誘導する化合物(Erastin等)を指します。がん細胞を特異的に死滅させることから、がん治療の分野でも注目されています。

フェロトーシス誘導剤
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