東京都医学総合研究所のTopics(研究成果や受賞等)

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2024年4月8日
陰性症状を有する統合失調症97例を対象に陰性症状を改善する企業治験が、統合失調症プロジェクトの糸川参事研究員をアドバイザーとして2017~2019年に実施されました。

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K-163-SZ(ピリドキサミン)の第II相プラセボ対照比較試験について

統合失調症プロジェクトの糸川参事研究員は、統合失調症10例を対象にピリドキサミンを用いた医師主導治験を2011~2012年に行いました。その後、陰性症状を有する統合失調症97例(ピリドキサミン群45名、プラセボ群52名)を対象に、陰性症状を改善する企業治験が2017~2019年に実施されました。

主要評価項目として、PANSS(Positive and Negative Syndrome Scale)の陰性症状尺度の総スコアのベースラインからの変化量を解析しましたが、ピリドキサミン群とプラセボ群との間に有意な差は認められませんでした。

医師主導治験ではウェルニッケ脳症を2例で認めたため、第II相企業治験では血中のビタミンB1濃度をモニターして、低下した症例にビタミンB1を併用投与する予定でした。しかし、1例でウェルニッケ脳症を認めたため、すべての症例にビタミンB1を予防投与する方法に変更して実施しました。

◎詳細は以下の臨床研究等提出・公開システム(jRCT)にて公開されています。

第II相企業治験では陰性症状を有する統合失調症に対して、ピリドキサミンの有効性が認められませんでした。統合失調症を対象としたピリドキサミンの開発は中止されましたが、引き続き私たちは統合失調症の原因解明と治療法開発のための研究を続けてまいります。

<用語解説>

プラセボ:
治験のとき、被験者を本当の治験薬を飲む群と色も味もそっくりな偽の薬を飲む群の二群に分けます。この偽の薬のことをプラセボと言います。被験者も治験医師も治験薬と偽の薬のどちらを服用しているのか誰も分からない状態で治験を行います。治験終了後にどちらを飲んでいたかを明らかにし、偽の薬より治験薬で症状の改善率が高いかを解析します。
ウェルニッケ脳症:
ビタミンB1不足により起きる脳の障害のことで、目の動きの障害やふらつきなどを生じます。ビタミンB1の速やかな投与により改善します。
PANSS:
統合失調症の症状の重症度を評価する目的で、最も一般的に使用されている尺度です。

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