東京都医学総合研究所のTopics(研究成果や受賞等)

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2024年10月2日
認知症プロジェクトの亀谷富由樹研究員、田平万莉奈技術員、長谷川成人プロジェクトリーダーらは、「多系統萎縮症とレビー小体型認知症におけるα-シヌクレインフィラメントの翻訳後修飾の解析と比較」について Scientific Reports に発表しました。

レビー小体型認知症と多系統萎縮症脳内に蓄積した
α-シヌクレインフィラメントの翻訳後修飾の解析と比較

認知症PJでは、これまでに極低温電子顕微鏡(cryoEM)解析により、レビー小体型認知症(DLB)と多系統萎縮症(MSA)と診断された患者の脳に蓄積するα-シヌクレインフィラメントのコア構造が異なることを示してきた。この研究では、これらのフィラメントの翻訳後修飾(PTMs)を解析し、コアフィラメント構造や病理学的特徴との関係を検討した。MSAおよびDLBフィラメントに共通するPTMsの他に、アセチル化、メチル化、酸化、リン酸化がMSAフィラメントでは頻繁に検出されたが、DLBフィラメントではほとんど検出されなかった。さらに、DLBフィラメントの場合、α-シヌクレインのプロセシングが119番目のアスパラギン酸残基(Asp)および122番目のアスパラギン残基(Asn)のC末端側で発生していたが、MSAの場合は、109〜123番目のアミノ酸の間の複数の部位で発生していた。さらに、α-シヌクレインに7アミノ酸残基挿入変異をもつ若年発症α-シヌクレイン症(JOS)の患者脳のα-シヌクレインフィラメントのコア構造はDLBとは異なり、一部構造がMSAに類似していることが報告されたが、PTMsの検出パターン、検出されたプロセシング部位はDLBではなくMSAに類似していた。以前、タウフィラメントのPTMsの修飾のされ方はフィラメントコア構造に依存することを報告した。今回の研究で、α-シヌクレインフィラメントでもPTMsの修飾のされ方はフィラメントコア構造に依存することが示された。

<論文タイトル>
“Analysis and comparison of post-translational modifications of α-synuclein filaments in multiple system atrophy and dementia with Lewy bodies”
(多系統萎縮症とレビー小体型認知症におけるα-シヌクレインフィラメントの翻訳後修飾の解析と比較)
<発表雑誌>
Scientific Reports
DOI: 10.1002/alz.14246
URL:https://www.nature.com/articles/s41598-024-74130-z
図1
CryoEMによるα-シヌクレインフィラメントのコア構造。
MSAとJOSには共通する構造があるが(赤色で囲んだ部分)、DLBとは共通する部分がない。
CryoEMによるα-シヌクレインフィラメントのコア構造。
MSAとJOSには共通する構造があるが(赤色で囲んだ部分)、DLBとは共通する部分がない。
図2
C末端がわの切断部位。
DLBは119残基と120残基の間及び122残と123残基の間で切断が起こっていたが、MSAとJOSではそれ以外の複数の部位で切断が生じていた。
C末端側の切断部位。
DLBは119残基と120残基の間及び122残と123残基の間で切断が起こっていたが、MSAとJOSではそれ以外の複数の部位で切断が生じていた。

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