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平成30年度
医学研セミナー

RNAとペプチドの共進化—生命誕生のプロセスを考える―

− この都医学研セミナーは終了しました。 −

演者 田上 俊輔
理化学研究所 生命機能科学研究センター 高機能生体分子開発ユニット(ユニットリーダー)
会場 東京都医学総合研究所 2階講堂
日時 平成31年2月18日(月)16:00〜
世話人 宮岡 佑一郎 再生医療プロジェクトリーダー
参加自由 詳細は下記問合せ先まで
お問い合わせ 研究推進課 普及広報係
電話 03-5316-3109

講演要旨

現在の生物では,遺伝情報は核酸(DNA,RNA)に保存されており,酵素活性等の機能は主にタンパク質によって実現されている.核酸がタンパク質(ポリメラーゼ)によって合成され,タンパク質は核酸(リボソーム)によって合成されることからも,核酸とタンパク質の相互依存的な関係は生命の根幹をなしていると言える.しかし,核酸上の情報をタンパク質のアミノ酸配列に変換するには非常に複雑な翻訳機構(リボソーム,tRNA,mRNA,アミノアシルtRNA合成酵素等)が必要であり,そのような高度なシステムを持つ生命が地球上に突然誕生したとは考えづらい.すなわち,どのように生命が誕生したかを考えるとき「核酸が先か,タンパク質が先か?」という疑問が生まれる.これまでに酵素活性をもつ様々なRNA(リボザイム)が発見されたことから,初期生命ではRNAが遺伝情報と酵素活性の両方を担っていたのではないかという仮説が有力視されている(RNAワールド仮説).では,どのようにしてRNAからタンパク質への機能の譲渡・変遷が起こったのだろうか? そもそも,本当にRNAだけで生命に必要な機能・要素が完結するのだろうか? 我々はこのような疑問に答えるためにリボザイムを補助する単純なペプチドの探索を行ってきた.その中で,正電荷を持つオリゴリジンが様々なリボザイムの活性を補助しうることが分かった(Tagami et al., Nat Chem, 2017).オリゴリジンのような1種類のアミノ酸しかもペプチドであれば,初期地球で非生物的に合成される可能性があり,複雑な翻訳機構を持たない初期生命でも利用可能だったかもしれない.以上の研究の結果に基づき,本セミナーでは,生命誕生の初期の段階からRNAとペプチドが既に共存関係を構築していいた可能性を議論する。

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