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平成30年度 医学研セミナー

周産期ストレスの“超”慢性的影響

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演者 高鶴 祐介
中沢会・上毛病院(医師)
会場 東京都医学総合研究所 2階講堂
日時 平成30年5月28日(月)17:00~
世話人 岡戸 晴生(神経細胞分化プロジェクトリーダー)
参加自由 詳細は下記問合せ先まで
お問い合わせ 研究推進課 普及広報係
電話 03-5316-3109

講演要旨

周産期ストレスが生育後に様々な精神疾患を引き起すことは広く知られており、その原因が脳の器質・機能的な発達障害によるものであることに疑う余地はない。しかしながら、精神疾患の発症メカニズムや脳機能の完全なる解明が達成されていない現在、周産期ストレスを受けた個人への明確な治療法が解明されているとは言い難い。母子関係に起因する周産期ストレスは、ヒト以外の哺乳類を用いた研究も盛んにおこなわれており、発表者らが取り組んできたげっ歯類による母子乖離(Maternal deprivationまたはseparation)モデルは一般的なツールの一つである。母子乖離モデルにおいては、成獣における鬱病様行動などが知られているが、発表者らはこれまでに、母子乖離マウスにおける知覚過敏症の存在を報告し、この変化が体性感覚野におけるグルタミン酸の過剰放出に起因している可能性を示した(Takatsuru et al., Brain Res., 2009, Toya et al., Eur.J.Neurosci., 2014)。

さらに近年発表者らは、母子乖離マウスにおける初老期認知機能の低下(Yajima et al., Neurobiol. Aging, 2018)や、母性行動の異常(Mitani et al., Psychoneuroendocrinology 2018)を報告している。特に母性行動の異常は、周産期ストレスを受けた母マウスの仔が母親になる際にも観察され、臨床症例で見られる報告と類似していることがわかってきた。このことは、周産期ストレスの影響が非常に長い時間(一個体の一生のみならず、世代を超えて)継続していることを示唆している。故に、周産期ストレスのメカニズム解明は、非常に長い期間の研究が必要であると考えられる。

当日の発表では、これらの研究内容を紹介するとともに、その背景にあると考えている因子、および、残された課題について提案する予定である。長期的研究が必要な分野でありかつ、今後の研究の進捗に多種多様な視点が重要になってくると考えられるため、多くの方が議論に参加することを願いたい。

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