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平成30年度
医学研セミナー

レム睡眠とその破綻のメカニズムや生理的作用

− この都医学研セミナーは終了しました。 −

演者 林 悠
筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構(准教授)
会場 東京都医学総合研究所 2階講堂
日時 平成31年3月6日(水)16:00〜
世話人 本多 真 睡眠プロジェクトリーダー
参加自由 詳細は下記問合せ先まで
お問い合わせ 研究推進課 普及広報係
電話 03-5316-3109

講演要旨

私たちの睡眠は、一晩の間に2種類のステージ、ノンレム睡眠とレム睡眠を行き来する。レム睡眠は睡眠全体の15%程度にしか満たないが、この間、寝ているにも関わらず脳は活発に活動し、鮮明な夢が生み出される。このような独特な生理状態が何のためにあるかは、脳科学の大きな謎であった。私たちはレム睡眠の役割の解明を目指し、レム睡眠を人為的に遮断・誘導できる遺伝子組換えマウスを世界で初めて開発した。そのマウスを詳しく調べた結果、レム睡眠には脳の柔軟性や記憶の定着を促す神経活動を誘導する効果があることが明らかとなった。

さらに最近では、認知症の主要な周辺症状である睡眠障害に着目し、メカニズムの解明とその応用に取り組んでいる。認知症患者では、レム睡眠や深いノンレム睡眠が大幅に減少し、浅いノンレム睡眠と中途覚醒が増加する。さらに、synucleinopathyの一つであるレビー小体型認知症では、レム睡眠中に体が動き出すレム睡眠行動障害も見られ、患者に日中の疲労感をもたらす。こうした睡眠関連症状は、認知症そのものの発症より何年も早くから現れることが多く、睡眠構築の異常による脳へのダメージが、認知症の発症または進行に寄与している可能性もある。しかしながら、認知症患者固有の睡眠障害の特徴に適した治療法はなく、睡眠構築の制御とその破綻のメカニズムの理解による、全く新しい医療技術の開発が切望されている。我々はこれまでに、脳幹橋の特定のニューロンの異常で多くの症状が説明できること、さらには、これらのニューロンの異常が認知機能の低下にも寄与することを解明した。また、世界に先駆けて、レム睡眠行動障害を再現したsynucleinopathyのモデルマウスを作出することにも成功した。これらの成果は、睡眠障害あるいは認知症そのものの有望な治療標的の同定につながるものと期待される。

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