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平成30年度
医学研セミナー

静水圧印加による血管系組織の再生

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演者 横山 詩子
横浜市立大学大学院 医学研究科 循環制御医学 (准教授)
会場 東京都医学総合研究所 2階講堂
日時 平成30年11月15日(木)16:00〜
世話人 三五 一憲 糖尿病性神経障害プロジェクトリーダー
参加自由 詳細は下記問合せ先まで
お問い合わせ 研究推進課 普及広報係
電話 03-5316-3109

講演要旨

iPS細胞や幹細胞をもちいた組織再生研究が進む中、血管組織の再生においては動脈特有の弾性組織の構築を再現することがいまだ極めて困難である。血管系には、恒常的に血圧がかかっており、血圧とは周期変動する圧力である。そこで我々は周期的に変動する静水圧を、培養血管平滑筋細胞に適用することによって、生体血管に酷似する弾性組織をもつ血管組織の構築を試みた。

多細胞生物における三次元構造にはフィブロネクチンの線維形成が必要であり、その足場を基盤として弾性線維が構築される。周期的静水圧印加によりRhoAシグナルの活性化を介して、フィブロネクチンの線維形成が促進された。特に生理的圧力を超える65 mmHg−650 mmHg, 0.002Hzの培養条件において最も耐圧性の高いシートが作製できた。さらに、細胞の播種と加圧培養を繰り返すことで、弾性線維を含む多層細胞シートが作製でき、これらは伸展率2倍以上、破断応力は1,400 mmHgと非常に高い弾性と剛性を有した。この血管グラフトをラット大動脈に移植したところ、4か月後までグラフトの生着と開存を確認することができた。

今日、複数の遺伝子操作と共に、薬品処理や生物学的製剤を用いることにより、細胞の分化と再生を促す技術が進んでいる。しかしながら、薬剤による変性・副作用や、製品の安全性および安定性が問題となる。本技術は、圧力印加のみで血管組織構築ができるものであり、再生医療に有用である可能性が示唆された。

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