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平成30年度
医学研セミナー

オキシトシンによる社会性行動・ストレス応答調節機構の解明と自閉スペクトラム症治療への応用の試み

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演者 横山 茂
金沢大学子どものこころの発達研究センター(センター長/教授)
会場 東京都医学総合研究所 2階講堂
日時 平成31年2月20日(水)16:00〜
世話人 山形 要人 シナプス可塑性プロジェクトリーダー
参加自由 詳細は下記問合せ先まで
お問い合わせ 研究推進課 普及広報係
電話 03-5316-3109

講演要旨

オキシトシン(OT)は様々なストレス刺激で脳内に分泌され、不安を軽減する作用をもつ。我々は以前、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドからCD38分子の、ADPリボシルシクラーゼの作用によって産生されるサイクリックADPリーボース(cADPR)が小胞体のリアノジン受容体チャネルを活性化し、細胞内カルシウム(Ca2+)濃度を増加させ、OTニューロンにおける非脱分極性OT遊離を増加させることを示した。OT分泌の調節機構として膜電位依存性Ca2+チャネルの活性化による脱分極性Ca2+流入が基本ではあるが、疑問点も多い。例えば、OT分泌は温度依存的であることが知られているが、発熱時にどのような機序で脳内への遊離が増加するかは不明であった。我々は、ストレスによる発熱時のOT遊離に関与する温度感受性分子がTRPM2イオンチャネルではないかとの仮説の検証を試みた。摘出・培養したマウス視床下部組織にcADPRを添加、あるいは組織を加温すると、OTの遊離は増加した。この増加は、リアノジン受容体あるいはTRPM2チャネルの阻害剤で抑制され、CD38遺伝子ノックアウト、TRPM2遺伝子ノックダウンによっても低下が観察された。以上から、発熱時の視床下部OTニューロンからのOT遊離増加がCD38分子とTRPM2チャネルを介していることが示唆された。

上記の研究に加えて、我々はOT類似化合物の創製に取り組んでいる。天然型OTは体内で分解されやすいため作用時間が短く、脳血液関門透過性が低いため脳内に移行しにくい。これらの問題点を克服するため、天然型OTに脂肪酸側鎖を付加し、3つOT類似化合物(LOT-1、-2 および-3: lipidated oxytocin-1, -2, and -3)を合成した。その薬理作用を天然型OTと比較検討した結果も併せて報告する。

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