2017年3月1日
米国科学誌「Cellular and Molecular Gastroenterology and Hepatology」に感染制御プロジェクト 真田 崇弘 研究員が 「B型肝炎ウイルスの新規感染経路の発見」 について発表しました。
B型肝炎ウイルス(HBV)は、ヒトに持続感染することで、慢性的な肝炎を引き起こし、やがては肝硬変・肝細胞癌を引き起こします。現在、HBV感染に対する有効なワクチンはありますが、ワクチン接種者であってもHBVに感染する事例が報告されています。そのため、ワクチン免疫を回避するメカニズムの存在があるものと考えられ、そのメカニズムの解明および対策が求められていました。今回の研究では、細胞間の情報伝達に関与している細胞外小胞に着目し、HBVが細胞外小胞に包まれることで、宿主からの免疫機構から回避しているのではないかと考え、ヒトの初代培養肝細胞を用いて、解析を行いました。その結果、細胞外小胞にはウイルスの遺伝子およびHBcタンパク質が内包されていることが明らかとなり、またウイルスとしての感染性をもつことがわかりました。さらに、HBVを内包した細胞外小胞の感染は、HBVに対する中和抗体では阻害できませんでした。以上の結果から、これまで知られていたウイルス粒子の産生・感染経路とは別の細胞外小胞を介したHBVの産生・感染経路が見出されました。本研究から、HBVのHBsタンパク質を標的とした現在のワクチン戦略では、HBV感染に対して不充分であると考えられ、細胞外小胞を介した感染経路を阻害することで、より予防効果の高いワクチン開発に繋がるものと考えられます。
本研究成果は、2017年3月1日、米国科学雑誌 「Cellular and Molecular Gastroenterology and Hepatology」 に掲載されました。
B型肝炎ウイルス(HBV)は、ヒトに持続感染することで、慢性的な肝炎を引き起こし、やがては肝硬変・肝細胞癌を引き起こします。全世界においておよそ3億5千万人もの慢性HBV感染者がいると考えられていますが、いまだB型肝炎を根治する治療法は存在しておらず、公衆衛生学上、重要な問題となっています。
現在、HBV感染に対する有効なワクチンはありますが、ワクチン接種者であってもHBVに感染する事例が報告されています。そのため、ワクチン免疫を回避するメカニズムの存在があるものと考えられ、そのメカニズムの解明および対策が求められていました。
我々は、細胞間の情報伝達に関与している *細胞外小胞に着目し、HBVが細胞外小胞に包まれることで、宿主からの免疫機構から回避しているのではないかと考え、ヒトの初代培養肝細胞を用いて、解析を行いました。
その結果、以下の点が明らかとなりました。
以上の結果から、細胞外小胞の中にはHBVのウイルス粒子そのものではなく、コア粒子として内包されているものと考えられます。これまで知られていたウイルス粒子の産生・感染経路とは別の細胞外小胞を介したHBVの産生・感染経路が見出されました。
本研究により、HBVのHBsタンパク質を標的とした現在のワクチン戦略では、HBV感染に対して不充分であると考えられました。細胞外小胞を介した感染経路を阻害することで、より予防効果の高いワクチン開発に繋がることが期待されます。