2017年4月11日
正井久雄副所長が、「ゲノムDNA複製を制御するメカニズムの研究」が評価され、平成29年度文部科学大臣表彰 科学技術賞(研究部門)を受賞しました。
文部科学省では、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者を 「科学技術分野の文部科学大臣表彰」 として顕彰しており、研究部門については、我が国の科学技術の発展等に寄与する可能性の高い独創的な研究又は開発を行った者を対象としています。正井久雄副所長は、ゲノムDNA複製メカニズムに関する、顕著な業績を認められ、平成29年度 文部科学大臣表彰 科学技術賞(研究部門) の受賞者に選定されました。
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/29/04/1384228.htm 参照
平成29年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞 受賞者一覧 PDF (13ページ目に名前)
ゲノムDNA複製は生命の維持・継承において最も根幹的な事象であり、疾患につながるゲノム変動を最小限に抑制し、ゲノムを安定に維持するように厳密に制御される。その制御においてはタンパク質リン酸化が重要な役割を果たすと考えられていたが、詳細は不明であった。又、ゲノム情報の研究は配列情報とエピゲノム情報を中心に行われてきた。ゲノムの大部分を占める遺伝子非コード領域に多く存在する、非標準型のDNA高次構造(非B型DNA)を形成するゲノム配列の生物学的意義はほとんど不明であった。
本研究では、進化的に保存されたCdc7キナーゼが複製開始制御の鍵を握る因子である事を明らかにし、その制御メカニズムを解明した。又、ゲノム上に多く存在するグアニン4重鎖構造が染色体の機能ドメインの形成や複製の制御に重要である事を明らかにした。 本研究により、ゲノム複製開始の制御機構の一般像が明らかになるとともに、ゲノム上の非B型DNA、特にグアニン4重鎖構造の普遍的な生物学的意義が発見され、DNAの形をゲノムの第3の情報と提案し、ゲノム機能の新原理解明に向けて重要な基盤を提示した。又、正常細胞と癌細胞で複製開始制御の機構が異なっており、それが癌細胞におけるゲノム不安定性の原因になっている可能性を指摘した。
本成果は、癌などの疾患をもたらす新規のゲノム変異の同定やメカニズムの解明をもたらし、新たな診断・治療法の開発に寄与することが期待される。
研究室の皆さんと