2017年4月10日
米国科学誌 「Nature Medicine」 on-line版に脳卒中ルネサンスプロジェクトの七田崇副参事研究員らが 「脳梗塞の炎症が収束するメカニズムを解明~白血病治療薬による脳梗塞の悪化阻止を確認~」 について発表しました。
脳卒中ルネサンスプロジェクトの七田 崇 副参事研究員らは、JST 戦略的創造研究推進事業において、脳梗塞後の炎症反応を収束させる遺伝子群を新たに発見し、これらの遺伝子群を制御することで炎症を早く収束させて、神経症状を改善できることを動物実験で明らかにしました。
脳梗塞は寝たきり状態や重篤な後遺症の主な要因ですが、有効な治療法は限られています。脳梗塞後に起こる炎症は、脳浮腫(注1)や神経症状の悪化の原因となるため、炎症を早く収束させる治療法の開発が期待されていますが、炎症収束のメカニズムは明らかではありませんでした。
本研究グループは、炎症の収束に関わる遺伝子群(Msr1、Marco、Mafb)の発見に成功し、これらの遺伝子群が、壊死した脳組織で産生された炎症惹起因子(注2)を効率的に排除することを発見しました。さらに白血病治療薬のタミバロテン(注3)が、これらの遺伝子群の発現を増加させることを見いだしました。脳梗塞を起こしたマウスにタミバロテンを投与すると炎症の収束が早まり、神経症状が改善されました。
本研究によって、脳梗塞のような病原体が関与しない無菌性炎症(注4)を収束させるメカニズムが解明されました。脳梗塞発症後の治療開始可能時間を広げる治療法の開発につながり、脳卒中医療に役立つことが期待されます。
2017年4月10日(英国時間)発行の米国科学誌 「Nature Medicine」 のオンライン速報版で公開されました。
https://www.nature.com/nm/journal/v23/n6/full/nm.4312.html