東京都医学総合研究所のTopics(研究成果や受賞等)

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2022年12月2日
再生医療プロジェクトの高橋剛研究員、宮岡佑一郎プロジェクトリーダーらは「ゲノム編集はヒト1細胞中で同時多発的に誘導される」という研究成果をiScience に発表しました。

English page

ゲノム編集はヒト1細胞中で同時多発的に誘導される

<論文名>
“Genome Editing Is Induced in a Binary Manner in Single Human Cells”
<発表雑誌>
iScience
DOI:https://doi.org/10.1016/j.isci.2022.105619

背景・目的

CRISPR-Cas9によるヒト細胞のゲノム編集は、標的とするゲノムDNA配列を鋳型DNAとの組み換えを介して、狙い通りに改変する相同組換え(HDR)以外にも、ランダムな挿入や欠失を副産物として生み出す、非相同性末端結合(NHEJ)も誘導してしまいます。ゲノム編集を実施した細胞集団には、これらの配列が様々に組合わされた細胞が存在することになります。ゲノム編集で生じた様々な遺伝子配列の組合せや頻度の細胞ごとの正確な把握は、特に医療応用において編集がもたらす治療効果を推定するために重要です。しかし、これまでゲノム編集結果を1細胞レベルで検討する研究は十分にはなされてきませんでした。

方法・結果

再生医療プロジェクトの高橋剛研究員、近藤大輝研修生(当時)・前田湊研修生(共に医科歯科大院)と宮岡佑一郎プロジェクトリーダーは、オンチップバイオテクノロジーズ社の協力のもと、画像認識による正確な1細胞自動分注が可能なOn-Chip Single Particle isolation System (SPiS) を使用して、ゲノム編集されたヒト培養細胞を1つずつ単離して培養し、2,600以上のクローンを樹立することに成功しました。これらのクローンのゲノムDNAを解析した結果、1細胞レベルでは、ゲノム編集が全く生じない細胞と、全ての標的配列が編集された細胞に二極化することが明らかとなりました。さらに、編集が起きた細胞では、狙い通りのHDRによる改変と、ランダムなNHEJによる改変とが同時に発生する傾向があることを突き止めました。本研究は、これまで知られていなかったCRISPR-Cas9がもたらす編集パターンを明らかとし、この知見は遺伝子治療などにも応用が期待されます。

本研究の概要

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