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平成28年度 医学研セミナー

神経軸索変性の分子メカニズム

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演者 荒木 敏之
国立精神・神経医療研究センター 部長
会場 東京都医学総合研究所 2階講堂
日時 平成29年1月18日(水)16:00~17:30
世話人 楯林 義孝 (精神行動医学研究分野 うつ病プロジェクト プロジェクトリーダー)
参加自由 詳細は下記問合せ先まで
お問い合わせ 研究推進課 普及広報係
電話(03)5316-3109

講演要旨

神経軸索の傷害後変性は、単に細胞体から分離した軸索が消えていく受動的過程でなく、一連の転写制御と酵素活性化を必要とするという意味で能動的な過程であり、神経細胞死の細胞内反応とは独立した細胞内反応系であると考えられている。軸索変性は神経変性疾患の発症過程に寄与し、また多くの症状の原因にもなっていることから、軸索変性過程の制御によって神経疾患に対する治療的効果を得ることができる可能性がある。

軸索の変性が能動的機序であることは、軸索の傷害後変性が著明に遅延する自然発症変異マウス(wldsマウス)の存在によって明確に示された。我々はNAD合成酵素であるNicotinamide mononucleotide adenylyltransferase (NMNAT)の酵素活性のミトコンドリアにおける発現が、ATP産生能の向上を含むミトコンドリアの機能変化をひき起こし、それがwldsマウスにおけるワーラー変性遅延・軸索保護効果に重要な役割を果たしていることを明らかにした。また、我々は最近、細胞骨格を構成する微小管の安定性制御メカニズムや軸索内におけるオートファジ―活性の制御が軸索変性をコントロールしていることを示した。これらのメカニズムの一部は疾患モデル(緑内障モデル、脳虚血モデルなど)において神経保護効果を示すことが示されており、神経保護的疾患治療の可能性を示すものと考えられる。

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