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演者 |
服部 光治 名古屋市立大学大学院薬学研究科 教授 |
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会場 | 東京都医学総合研究所 2階講堂 |
日時 | 平成29年2月23日(木)16:00~17:30 |
世話人 | 前田 信明 (脳発達・神経再生研究分野 神経回路形成プロジェクトリーダー) |
参加自由 | 詳細は下記問合せ先まで |
お問い合わせ |
研究推進課 普及広報係 電話(03)5316-3109 |
哺乳動物脳では神経細胞が層をなしており、この構造は正常な回路網形成および機能発現に必要である。層構造が極めて異常な突然変異マウス「reeler」についての研究は60年以上の歴史があるが、このマウスで欠損する巨大分泌タンパク質「リーリン」の機能の全貌は未だ解明されていない。また近年、リーリンの「機能低下」がアルツハイマー病や統合失調症などの精神神経疾患の発症や増悪化に寄与することが数多く報告されている。しかし、リーリンの機能低下と疾患をつなぐ分子メカニズムはあまり理解されておらず、また、どうすればリーリンの機能低下を防げるのか、その方策も大きな課題となっている。
我々は、脳の形成と機能発現におけるリーリンの役割とその調節機構を解明し、それらの知見をヒトの疾患治療につなげることを目的に研究を進めてきた。特に最近、神経細胞の培養上清からリーリンを分解・不活化する酵素を精製し、これがADAMTS-3というメタロプロテアーゼであることを同定した。ADAMTS-3欠損マウスの脳ではリーリン分解が顕著に減少し、下流シグナルは亢進していた。中でも、タウのリン酸化(リーリンにより減少することが知られている)が減少していた。よってADAMTS-3の阻害剤はリーリン機能を増強し、アルツハイマー病などの精神神経疾患を改善する可能性がある。現在、製薬企業と共同でADAMTS-3阻害剤を開発中である。本講演ではリーリン研究の歴史と現状も踏まえつつ、残された問題を解決するには何が必要なのかを議論したい。