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演者 |
田中 稔久 大阪大学大学院医学系研究科 精神医学 准教授 |
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会場 | 東京都医学総合研究所 2階講堂 |
日時 | 平成29年1月25日(水)16:00~17:00 |
世話人 | 楯林 義孝 (精神行動医学研究分野 うつ病プロジェクト プロジェクトリーダー) |
参加自由 | 詳細は下記問合せ先まで |
お問い合わせ |
研究推進課 普及広報係 電話(03)5316-3109 |
高齢化社会を迎えた現在、認知症の病態メカニズムの解明は大きな課題である。アルツハイマー病(AD)における神経病理学的変化は老人斑と神経原線維変化である。老人斑の主要構成成分はアミロイドβ蛋白であるが、これはアミロイド前駆体蛋白からβセクレターゼおよびγセクレターゼによって切断されることによって産生される。産生されたアミロイドβは酸化ストレスなどの神経毒性を有するが、またシナプス伝達障害を引き起こすことも報告されている。アミロイドに対してはいくつかの抗体薬を含む治療薬の臨床治験が行われている。神経原線維変化の構成成分は異常にリン酸化されたタウ蛋白であり、本来タウ蛋白は微小管重合機能を有するが、リン酸化によりその機能を喪失し、さらにまた独自の神経毒性機序を発揮する。また、FTD患者脳内に蓄積する蛋白として、TDP-43およびFUSも報告されている。最近に同定された家族性FTDの原因遺伝子はC9orf72であり、ヘキサヌクレオチドリピートの異常な拡張が生じることにより発症する。病態機序として特異なRNA構造によるという仮説と病的に翻訳されるジペプチヂルリピート蛋白によるという仮説とがあるが、詳細は不明である。このように様々な認知症に関するさまざまな分子病態が解明されつつあるが、早期診断のためのバイオマーカー開発および根本的な治療薬創薬に結びつくことが強く期待されている。