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平成26年度 医学研セミナー

渇望(精神依存)の構造と、その神経学的機序:ニコチン、覚醒剤からギャンブル、インターネットまで

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演者 宮田 久嗣 (東京慈恵会医科大学 精神医学講座 教授)
会場 東京都医学総合研究所 講堂
日時 平成27年1月8日(木)16:00
世話人 池田 和隆 参事研究員(依存性薬物プロジェクト)
参加自由 詳細は下記問合せ先まで
お問い合わせ 研究推進課 普及広報係
電話(03)5316-3109

講演要旨

物質(アルコールや覚醒剤)や行動(ギャンブルやインターネット)のアディクション(依存とほぼ同義)の中核症状は“渇望”(精神依存)である。 これに対して、身体依存に伴う“離脱症状(退薬症候)”は、その不快感から“渇望”を増強するものの、アディクションの本質的な症状とはいえない。

本講演では、“渇望”の構造とその背景にある神経学的機序を考えてみたい。まず、“渇望”の基盤をなす要因は、①「物質や行動の一次性強化効果(報酬効果とほぼ同義)」である。 物質の一次性強化効果を最も妥当性高く評価できるモデルは、比率累進法による薬物自己投与実験である。 本モデルでは、薬物を自己摂取するために必要なレバー押しの回数を徐々に増加させていくことで、一次性強化効果の強さを物質ごとに測定できる(結果:モルヒネ>覚醒剤>アルコール>ニコチン)。 この神経学的機序は、脳内報酬系の刺激作用とされる。次に、“渇望”を構成する第二の要因は、②「離脱による不快感」である。 離脱時の身体症状は精神抑制薬でのみ認められるが、離脱時の精神症状は物質や行動の種類にかかわらず共通して認められることから、離脱時の不安、イライラ、抑うつ、不眠、不快感などが“渇望”の重要な構成要素を形成している。 その背景の神経学的機序は、“脳内報酬系の代償性機能低下”とされる。“渇望”を構成する第三の要因は、③「物資や行動の一次性強化効果と結びついた環境刺激」である。覚醒剤依存症者が注射器を見るとウズウズする、アルコール依存症者が赤ちょうちんを見ると酒を飲みたくなるなどの現象である。 このモデルには条件性場所嗜好実験やsecond order schedules of reinforcementなどがある。 その神経学的機序は条件づけ機構であり、海馬・扁桃体のD3受容体、腹側被蓋野原のD2受容体、カンナビノイドCB1受容体を始めとした学習・記憶系の関与が想定されている。

最後に、物質と行動のアディクションの類似点と差異を考えてみたい。 まず、類似点は、両者で共通の治療法が利用できる、症候学的な類似点がある、脳内報酬系への作用など一部に共通の神経学的基盤が報告されているなどである。 一方、手首自傷、拒食などの行為を行動のアディクションと考えた場合、本来、これらの行為は生体にとって嫌悪的で罰刺激である。 しかし、特定の人たちにとっては報酬的となり、その行為をコントロールできない強い欲求が生じる。 物質のアディクションと比較して、このプロセスをどのように考えるのかがアディクション・サイエンスの課題といえる。

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