演者 | 駒田 雅之 (東京工業大学 大学院生命理工学研究科 教授) |
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会場 | 東京都医学総合研究所 講堂 |
日時 | 平成27年2月12日(木)16:00 |
世話人 | 佐伯 泰 副参事研究員(蛋白質代謝研究室) |
参加自由 | 詳細は下記問合せ先まで |
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クッシング病は、脳下垂体の副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)産生細胞の腺腫からのACTHの分泌過剰により引き起こされる。 その発症の分子機構を解明するため、10人のクッシング病患者から摘出した下垂体腺腫の全エクソーム解析を行った結果、4人の腫瘍において脱ユビキチン化酵素USP8の遺伝子に体細胞変異を見出した。 これらの変異はUSP8の14-3-3結合モチーフに集中しており、変異USP8は14-3-3タンパク質結合能を失っていた。
その結果、変異USP8は14-3-3結合モチーフの直前で分子切断を受けやすくなり、切断により生じた酵素活性ドメインのみからなるタンパク質断片は高い脱ユビキチン化活性を示した。
USP8は上皮細胞増殖因子EGFにより活性化されたEGF受容体を脱ユビキチン化することにより、そのリソソームへの輸送・分解を負に調節することが知られている。 変異USP8はEGF受容体を過度に脱ユビキチン化してそのリソソーム分解を阻害した。
その結果、EGFシグナリングの持続的な活性化を引き起こし、これがACTH前駆体タンパク質プロオピオメラノコルチンの遺伝子発現とACTH分泌の亢進を引き起こすと考えられた。
以上より、下垂体のACTH産生細胞におけるUSP8の機能獲得型変異がEGFシグナルの過剰をきたしてクッシング病の発症につながることが示唆された。