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演者 | 門司 晃 (佐賀大学精神医学講座 教授) |
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会場 | 東京都医学総合研究所 講堂 |
日時 | 平成27年3月26日(木)16:00 |
世話人 | 楯林 義孝 副参事研究員(うつ病研究室) |
参加自由 | 詳細は下記問合せ先まで |
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研究推進課 普及広報係 電話(03)5316-3109 |
精神疾患の病態生理としての神経免疫学的機序が最近注目を集めている。過剰な神経免疫反応から生じる炎症性サイトカインや酸化ストレスは様々な神経変性疾患の病態生理に重要な役割を果たすが、統合失調症や気分障害などの機能性精神疾患においても同様の状況が想定されている。ミクログリアは中枢神経系細胞の10%足らずを占め、マクロファージや単球と同じ中胚葉由来の細胞である。ミクログリアは中枢神経系の自然免疫の担い手として炎症性サイトカインやフリーラジカルを産生するが、その活性化が過大となっている可能性が機能性精神疾患でも指摘されている。過大な炎症性サイトカインや酸化ストレスは神経細胞への直接的な障害のほかに、白質病変の誘導等を通じて、機能性精神疾患の病態生理に関与する。近年の神経画像研究や神経病理研究は、ミクログリア活性化をふくむ神経炎症が機能性精神疾患の急性期に生じている可能性を示唆している。抗精神病薬や抗うつ薬の一部にミクログリア活性化抑制作用があることが証明されており、解熱鎮痛薬やミクログリア活性化抑制作用を有するミノサイクリンが抗精神疾患治療に有用であるとの臨床的報告も増えている。従って、機能性精神疾患の「抗炎症療法」の開発は将来的に有望であると考えられる。急性炎症の4主徴である、発赤・発熱・腫脹・疼痛を必ずしも示さず、しばしば組織構築の改変を伴う“慢性炎症”は癌・脳卒中・心筋梗塞・糖尿病の“四大重要疾病”の病態生理に重要な役割を果たすことが、近年の研究から明らかにされている。最近の調査では多くの精神疾患の患者と健常人との間の寿命差は広がっており、その結果に対する身体疾患の寄与度は自殺の寄与度以上であると指摘されている。“慢性炎症”と精神疾患の関係を、臨床および基礎的な面から検証することは、精神疾患の予防、慢性化・難治化の阻止等によって、精神疾患に悩む患者の生活の質を様々な角度から改善することが可能であると考えられる。