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演者 | 住谷 昌彦 (東京大学医学部附属病院 緩和ケア診療部 部長) |
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会場 | 東京都医学総合研究所 講堂 |
日時 | 平成27年3月9日(月)16:00 |
世話人 | 池田 和隆 参事研究員(依存性薬物プロジェクト) |
参加自由 | 詳細は下記問合せ先まで |
お問い合わせ |
研究推進課 普及広報係 電話(03)5316-3109 |
慢性疼痛疾患の発症原因は末梢神経および脊髄レベルでの分子生物学的な異常による神経過興奮と説明されて久しい。しかし、慢性疼痛患者に神経ブロックによる求心路遮断が必ずしも有効でないことや神経系(脊髄、視床、大脳運動野)への電気/磁気刺激が鎮痛効果をもたらすことなどから、末梢神経および脊髄レベルだけの異常とは考えられない。
我々は慢性疼痛の専門医として「ヒト難治性疼痛患者の訴える病的疼痛の多くは大脳認知機能の異常に由来する」という立場を取り、中枢神経系、特に大脳レベルに働きかける神経リハビリテーションと身体性(知覚-運動協応)をキーワードに診療を行っている。
四肢切断後には失ったはずの手足が存在するように知覚(幻肢)し、幻肢に痛みを感じる幻肢痛が出現する。幻肢痛は薬物療法に抵抗性のことが少なくないが、鏡を用いた神経リハビリ治療を幻肢痛に対して行うと、幻肢の随意運動感覚が出現し、それとともに深部知覚に関連した痛み(例:関節を捻られるような)は改善する一方で、皮膚表在感覚に関連した痛み(例:針で刺されるような)には無効であった。このような幻肢痛や他の慢性疼痛疾患の治療経験を通じて、ヒト身体における運動表象や感覚表象の神経基盤を解明する手がかりとしたい。