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演者 | 富山 貴美 (大阪市立大学大学院医学研究科 脳神経科学 准教授) |
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会場 | 東京都医学総合研究所 講堂 |
日時 | 平成27年3月27日(金)16:00 |
世話人 | 長谷川 成人 参事研究員(認知症・高次脳機能研究分野) |
参加自由 | 詳細は下記問合せ先まで |
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研究推進課 普及広報係 電話(03)5316-3109 |
タウの免疫療法はタウ病理の改善に有効であることがモデルマウスで報告されている。我々は、これまでにない高い治療効果を持つ新しいモノクローナル抗体を取得すべく、2008年より研究を開始した。用いたモデルマウスは、我々自身が作製したタウのイントロン変異を持つトランスジェニックマウスである。まず、20種類以上のリン酸化タウ抗体を用いてモデルマウスの脳を染色し、タウ分子内でより早期から強くリン酸化されているサイトを検索し、新規性なども考慮して、pSer413を標的とすることに決定した。このエピトープに対するマウスモノクローナル抗体Ta1505を作製し、14カ月齢のモデルマウスに1週間に1回、1 mgずつ計5回腹腔内投与した。Ta1505はマウスの記憶障害を改善し、海馬のリン酸化タウ、タウオリゴマー、シナプス消失、嗅内皮質の神経原線維変化、ニューロン消失を有意に抑制した。これらの効果は、コントロールとして同時に作製したpSer396に対する抗体よりも強かった。現在は、Aβとタウの両方の病理を発現するモデルマウスでその効果をみているところである。以上の結果は、pSer413がタウ免疫療法の標的として有望であり、Ta1505が受動免疫用抗体の有力なプロトタイプとなることを示している。今後はこの抗体をヒト化し、臨床試験に臨みたいと考えている。