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平成27年度 医学研セミナー

東京都の研究所から始まったNecdinの研究

− この都医学研セミナーは終了しました。 −

演者 吉川 和明(大阪大学蛋白質研究所 教授)
会場 東京都医学総合研究所 2階講堂
日時 平成28年2月26日(金) 15:00~16:00
世話人 山形 要人 副参事研究員(シナプス可塑性プロジェクトリーダー)
参加自由 詳細は下記問合せ先まで
お問い合わせ 研究推進課 普及広報係
電話(03)5316-3109

講演要旨

東京都精神研に在籍していた1991年、テラトーマ由来の胚性ガン細胞を神経分化させた時に誘導される新規の遺伝子を見つけ、それがコードする仮想蛋白質をNecdinと名付けた。東京都神経研に異動して研究を続けると、Necdinはニューロンに強く発現していて、細胞増殖を抑制することが分かった。大阪大学蛋白質研究所に移ってから、Necdinの蛋白質としての実体と機能についての研究に取り組んだ。研究を進めて行くと、Necdinは多数の蛋白質、特に核蛋白質と複合体をつくることが分かった。Necdinに結合する蛋白質は、細胞の増殖、生存、死などに関わる重要なものが多いため、Necdinは、これらの蛋白質との相互作用を介してニューロンの生存能を強化することが示唆された。一方、種々の生物のゲノム情報から、Necdin遺伝子(NDN)は、胎盤をもった哺乳類(真獣類)への進化に伴って、祖先型MAGE(melanoma antigen)遺伝子から創られたことが分かった。また、Necdin遺伝子は、哺乳類特有のエピゲノム制御であるゲノムインプリンティング(ゲノム刷り込み)を受けているため、父性Necdin遺伝子を欠損させたマウスでは、様々なニューロンに異常が見られる。さらに、Necdinは、ニューロンだけでなく、神経幹細胞をはじめ種々の幹細胞の増殖や死を抑制する作用があることが分かった。これらの知見から、Necdinは、哺乳類ニューロンの長期に亘る生存を維持するために進化したものと推定される。

本セミナーでは、東京都の研究所で始めて、25年間続けてきたNecdinに関する研究結果を報告する。

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