− この都医学研セミナーは終了しました。 −
演者 | 瀬藤 光利(浜松医科大学 医学部 教授) |
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会場 | 東京都医学総合研究所 2階講堂 |
日時 | 平成27年12月24日(木) 16:00~17:00 |
世話人 | 村上 誠 参事研究員(脂質代謝プロジェクトリーダー) |
参加自由 | 詳細は下記問合せ先まで |
お問い合わせ |
研究推進課 普及広報係 電話(03)5316-3109 |
脂質分子は脂肪酸の不飽和度、炭素-炭素二重結合の分子内位置、構造異性体などにより10万分子種を超える多様性を示し、その総体はリピドームとも呼ばれる。質量分析を中心とした生化学技術の発展でこれら多様なリピドーム分子種の存在が明らかになってきた。さらに、組織標本を顕微鏡レベルの解像度で走査、質量分析を行ういわゆる質量顕微鏡法によって、リピドーム分子種ごとの特異的な組織内分布が初めて明らかになってきた。そうした発見を受けて、近年、脂質のこうした質的多様性すなわち「リポクオリティ」が、機能的にも意味があるのではないかと考えられ始めている。その一例として、最近我々が行っている動脈硬化の解析を紹介したい。動脈硬化は我が国で最も重要な高齢化に伴う生活習慣病の一つである。アテローム性動脈硬化病変を解析したところ、これまでいわば十把一絡げにとらえられてきたコレステロールエステル群、リン脂質群、トリグリセリド群の分子種群が病理学的な位置関係に対応した局在を示し、かつリポクオリティの違いによっても病態病理の中での分布が異なることを発見した。さらに遺伝子改変モデルマウスと脂肪酸の経口投与を用いて血中リポクオリティを人為的操作すると、血管内皮細胞-プラーク-血管壁間で時空間的に顕著なリポクオリティのリモデリングが起こることを発見した。
本セミナーではこうした時空間的なリポクオリティの操作と観察について発表議論したい。